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金魚すくいにテレビゲームが「仕事」? “虚業”化した障害者雇用をどう変える効率化へのインセンティブなき「異常」(3/5 ページ)

» 2018年12月14日 08時42分 公開
[今野大一ITmedia]

「社内福祉」の限界

 もう一つは今まで外部に委託していた仕事を会社の中に取り込んで、障害者を雇用する「内部取り込み型」があります。これはもともと内部でやると非効率な仕事を、外部に持っていっていたわけです。それをわざわざ内部に持ってくるのは、その時点で非効率なのです。しかも資金力がなければできません。そして外の企業に頼んでいた企業の仕事を奪っているだけで、新たな雇用を作っているわけではありません。これは社会全体にとってプラスとはいえないでしょう。

 最近は「社内福祉型」の障害者雇用も生まれていて、社内カフェや農業に従事させる事例があります。企業が作った社内カフェで、コーヒーを作ったり接客をさせたりするのです。そこで「障害者の人が一生懸命いれたおいしいコーヒーです」といって100円程度で販売し、飲んだ社員は感動したなどと言っています。では、生産性という意味で考えたときに、障害者の人たちはスターバックスのアルバイトの人たちと比べて本当に生産性が高いのでしょうか? そうではありませんね。つまり、障害者の一生懸命な姿に感動しただけなら、その時点でそれは社内福祉になってしまっているのです。

 社内カフェで雇用したとしても、それは本業で雇っているわけではありません。障害者の人たちの能力を、戦力として活躍させている会社ではないと私は考えています。

 あとは特例子会社で、障害者に販促用パンフレットを封入してもらっている会社もよく見かけます。でも、(作業分のお金をもらいながら比較的自由に働ける)就労継続支援B型に通う障害者が宅配ずしの販促パンフを入れる仕事をすると、1枚入れてもたった10銭程度の稼ぎです。そんな仕事をいくらやってもたいした収入にはならないのです。ですからこうした作業も社内福祉と言わざるを得ません。

 もう一つの問題は、特例子会社では親会社から受け取る報酬が、掛かった費用に利益を上乗せした「総括原価方式」で決められることが多いため、経営を効率化させるインセンティブがない点です。親会社にしてみても、生産性を上げて効率化を進めると、人を減らさないといけなくなり、雇用率が達成できなくなってしまいます。だから特例子会社の経営者は困るわけです。「生産性を上げても親会社は喜ばないんだよなあ」と。

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