“アナログ返り”が起きている 大盛り上がりの「文具女子博」で感じた業界の熱“デジタル化の波”なんのその(2/3 ページ)

» 2018年12月14日 19時35分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

TSUTAYAも文具を出していた

 潜在需要を掘り起こすため、独自開発した商品の展開に注力する企業もある。カルチュア・コンビニエンス・クラブ傘下で、CDレンタルショップの展開で知られるTSUTAYA(東京都渋谷区)も、文具のPB(プライベートブランド)を数種類手掛けている。

 同社は文具女子博に、30〜40代の女性をターゲットとするPB「HEDERA(ヘデラ)」を出展。ターゲット層に訴求するため、かわいさと落ち着いた印象を併せ持つ「カッパー(ピンク色に近い銅色)」などで彩色した商品をそろえる同ブランドは、化粧品の容器に似た、おしゃれなフォルムをデザインに取り入れている。

 例えばステープラー(ホッチキス)は、閉じた際にスイッチを押してロックを掛けることで、針を収納する部品(マガジン)や針を刺す部品(ドライバ)などを内部に隠し、完全な円筒形にすることができる。机の上などに立てて飾ることも可能だ。

ALTALT TSUTAYAのステープラー

 ほこりがテープにつかないよう収納ケース一体型としたテープカッターは、収納時に丸みを帯びた形状になり、一目見ただけでは文房具だと分からない。

 TSUTAYAの担当者は「コストカットの目的で、経費で社員に文房具を買い与える企業は減りつつあるが、その反動で『自分でお金を出すなら良いモノがほしい』と考える一般消費者が増えている。こうした影響で、文具事業の売り上げは落ちていない」と説明。「デスクの周りに置くだけで、ユーザーの気持ちを高められるような商品を届けていきたい」という。

ALTALT TSUTAYAのテープカッター

「文具女子博」で感じた確かな熱

 明るい表情で、業界動向と商品の売れ行きについて語ってくれたマークスとTSUTAYAの担当者。だが読者の中には「そりゃあ、関係者が『文房具業界はピンチです』と正直に話すわけがないだろう」「そうはいっても、いまはペーパーレス化の時代。『文房具離れ』は進んでいる」と考える人がいるかもしれない。

 ただ、イベントの終了時間が近づいても、お気に入りの文房具を手に取ってレジに並ぶ女性は後を絶たず、会場内には長蛇の列ができていた。動線の整理担当者は「ピーク時は会計だけで3時間待ちの状態だった」と説明する。「商品を買いたかったけれど、列が長すぎて断念した」と残念そうに話す女性客もいた。

photo 会場内の長蛇の列

 こうした状況を目の当たりにしたことで、筆者は「デジタル化の時代においても、“文具女子”に支えられている文房具業界は、まだまだ盛り上がりそうだ」と素直に感じた。

 主催する日本出版販売の広報担当者も「デジタル化が進む一方で、手作りの文房具のあたたかさが好きな人や、かわいくておしゃれな文房具を支持する人は増えている。いわば“アナログ返り”が起きているのかもしれない」と話していた。

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