分散投資でも防げない2つのリスクを知っていますか?渋谷豊の投資の教室(2/6 ページ)

» 2018年12月21日 11時19分 公開
[斎藤健二ITmedia]

サイトウ: 前回、投資で最も重要として出てきたのがリスクですね。自分にちょうどいいリスクにするために、分散投資することでコントロールすると。

渋谷: そうすると全ての人に分散投資が適しているわけではないということが分かるのではないかと思います。資産形成には分散投資がいいのか集中投資がいいのかという議論が世の中には未だにあるようですが、私の中ではこの議論はすでに存在していなくて、人それぞれで分散投資が必要な人、必要としない人がいると考えています。

 例えば現在保有している100万円に関しては仮にゼロになってもいいので、しっかりと将来の成長が期待できる企業に投資を行い、リスク、つまり資産のブレを取りたいという人は分散投資は必要ないわけですね。それはもう本人の意志でありリスクに対するスタンスです。それが成功することもあるし、当然うまくいかないこともあります。一方これが退職金で、なにがなんでも減らすことができない、つまりリスクを抑えるために分散をしたいという人もいるでしょう。このようにその人の目的によって分散投資の必要性が異なります。

 そう考えると、いろいろなところで行われている分散投資についての説明は、すごく誤解を招く伝え方、もっといえば間違っていると私はいつも思っているんです。例えば「投資で安心安全を求める方は債券の割合を50%以上」といういうふうにほぼ断言される人が多いのですが、でもそれは少し間違えていると思います。

 なぜかというと経済状況によっては債券の方が株式よりもリスクが高いことがあるからです。長い歴史から見ると、株の方が債券よりもリスクは大きくなる傾向があるのですが、しかし、ある状況下においては、債券の方が値動きが激しいということもあるわけです。

 もちろん長期で保有すればその本源的なリスクに収束するのですが、ただひとくくりに50%以上債券を持っていれば「私は債券中心でリスクがコントロールできている」という考え方は、ときには間違っているんです。人によって投資期間も投資開始時期も異なるわけですし、すごく保守的な運用を行っているようなことを意識しておきながら、実は株式投資よりも激しく変動するリスクを取っているということが無意識のうちに起こり得るのです。

 だから分散ありきじゃないんですよね。分散はリスクをコントロールするためのものなんです。自分の許容できるリスク前提に、どう分散させるかを決めていきます。リスクをベースに投資を考えていくと大きな間違いが起こりにくくなります。

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