サイトウ: 分散投資としてポートフォリオを組んでもシステマティックリスクは防げない。でも、防げないことを知っていればOKということですね。
渋谷: そうですね、まずは理想だけではなく本当の姿を理解しておくことが大事です。では、2つ目のシステミックというリスクですが、これは、金融機関が破綻するような時やその危機に陥っている時には、銀行決済のトラブルや金融機関への疑念などで、さまざまな資産の価値が下がっていきます。金融商品というのは必ず誰かが発行しています。A銀行とかB証券だとか。金融機関が破綻するとか破綻しそうだというニュースが流れると、一斉に全ての機能がおかしくなる。つまり保有している金融商品を誰も適正な価額で評価しなくなるんです。
破綻のウワサのある銀行が発行している100万円の社債と100万円の現金を交換してと言われたらどう思いますか? かなり怖いなと思うじゃないですか。でもメガバンクといわれているような銀行ならいいかなとか地元の健全性の高い地銀ならいいかなとか。これこそ信用なんです。
この信用が全部を疑われるような経済環境になると、現金を預けることすら信用できなくなります。ましては、債券や株だってどうなるか分からない。そうして、ある時に決済不能が起こり世界中に拡散していく。こうなってくるとさらにみんなが投げ売りして暴落する。
経済が大きく下がるような局面(システマティックリスク)と、金融機関の不信や決済不能(システミックリスク)が起こった時は、ポートフォリオを組んだり分散投資をしたりしても、残念ながらそれを避けられない状況があります。分散投資をやる前にそれを知っておいてほしい。
そうすれば、後はリスクの範囲内でしっかりコントロールできます。そして長期で投資と付き合えば、本来あるべき価格に収束していくので、高い確率で利益が出るわけです。
ファイナンシャルアカデミー取締役。中上級者向け講座では教壇にも立つ。大学卒業後、邦銀勤務を経て、慶應義塾大学大学院 経営管理研究科(MBA)を修了。その後、米系、仏系銀行のプライベートバンク部門にて、富裕層の資産運用業務に13年間従事。2008年の世界的金融危機を体験し中立的な金融アドバイスの必要性を痛感し、独立系投資顧問会社代表に就任した後、さらに幅広い層に金融経済教育を広めるためファイナンシャルアカデミーに参画。現在は投資信託スクールでの講師のほか、Jリーグの選手への講演等も行う。ファイナンシャルアカデミー
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