カルロス・ゴーンは現代の立花萬平か 日本が「人質司法」を止められない事情スピン経済の歩き方(2/6 ページ)

» 2019年01月15日 08時04分 公開
[窪田順生ITmedia]

日本の醜悪な側面

NHK連続テレビ小説 まんぷく 上』(福田 靖、田渕 孝/NHK出版)

 このようないわゆる、日本特有の「人質司法」への批判を耳にするたび、怒りで発狂しそうなっている方も多いのではないだろうか。

 「日本には日本のやり方がある! よその国が口を挟むな!」「外国人だろうが、億万長者だろうが、他の日本人の被告と同じように扱っているんだから平等だろ!」

 このような怒りの反論とはやや方向性は異なるが、実は筆者もWSJなどの主張には腹がたってしょうがない。国際的な影響力もある経済ジャーナリズム機関や、人権団体のわりに日本を一方的にディスることしかやっていないからだ。

 奇妙だ、不思議だ、驚いた、と日本を「後進国」扱いする前に、この国がなぜそういう「ガラパゴス司法」を続けざるを得ないのか「外」から客観的に分析もしていない。しかも、それを行う上での最適な資料が、ちょっと前まで日本中の茶の間に毎朝流れていたにもかかわらず、そこをスルーしていることにヤキモキするのだ。

 なんてことを言うとカンの良い方はお分かりだろう。そう、NHKの朝ドラ『まんぷく』だ。

 毎朝楽しみにご覧になっている方には説明の必要がないだろうが、実は昨年までこのドラマの主人公である立花萬平という起業家は、GHQからいわれのない脱税の罪を被せられて、刑務所へと収監されていた。

 なぜそんなことになったのか。ドラマ内の設定としては、戦後に脱税が大きな社会問題となっており、その「見せしめ」としてヒット商品で名の知れた立花萬平にGHQが目をつけ、東京財務局に罪人として仕立てあげろと命じたというもの。要するに、ゴーン氏逮捕時にもその名をよく耳にした「国策捜査」という設定なのだ。

 「ドラマと現実を混同するなんて、こいつの頭は大丈夫か」と心配してくれる方も多いかもしれないが、実はこの朝ドラ、まったくのフィクションではなく、ある日本の醜悪な側面をオブラートで包んで伝えているのだ。

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