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» 2019年01月21日 07時00分 公開

没入感が違う:「こんな接客は嫌だ」をリアルに体感 そごう・西武がVRのマナー教材を開発したワケ (3/4)

[昆清徳,ITmedia]

VRを使うことへの理解を得られた背景

 新しいテクノロジーを使って新規事業を立ち上げる際に課題となるのは、社内のコンセンサスを得ることだ。若尾氏も「VRに対する解釈がバラバラで、教材のイメージを伝えるのに苦労しました」と振り返る。当初は「ソニーのプレイステーションで遊ぶVRのゲームみたいに派手な映像にするの?」「DVDのコンテンツにするのはダメなの?」「そもそもVRって何?」といった反応があったという。

 若尾氏によると、周囲を説得するのに役立った出来事があった。それは、17年の夏に行われた「オフィス防災EXPO」というイベントだ。そごう・西武でも10年近くこのイベントに出展している。この展示会場で、災害時の避難体験を提供できるVRコンテンツを利用者に試してもらったところ、「うちの防災訓練でも使いたい」という声が多数寄せられた。会社が実施する避難訓練というと、どうしても型通りのものになってしまい、社員の参加率も低くなりがちだが「VRを使ったことないから試してみたい」「リアルな体験ができる」という点が評価され、多くの引き合いがあったという。

 また、若尾氏の上司は、認知症患者が普段の生活でどのようなモノの見方や感じ方をしているのかといったことを体験できるVRを試したことがあり、「VRを使えば、深い学習効果が得られる」という確信をもっていたことも追い風になった。

教育業界をターゲットにした理由

 本格的な事業化を検討する上で、若尾氏はさまざまな顧客のニーズを聞き出した。そこで分かったのは、業界ごとに社員研修に対するニーズが異なるため、どこか特定の分野にフォーカスしたほうが効果的だということだ。数ある業界の中から若尾氏は教育分野を狙うことにした。若尾氏自身が親なので顧客の目線に立てることに加え、公立学校や民間の塾では親からのクレームを未然に防ぐために接遇マナー教材の需要はあると判断した。

 教育業界をターゲットにした後は、若尾氏は学習塾の関係者に「VRを使った研修教材を作りたいので、実際に困っていることを教えてください」とヒアリングを行った。数多くの課題を抽出し、教材で取り上げるべきテーマに優先順位をつけて、ストーリーを作りこんでいった。シナリオや役者の人選にあたっても、教育分野に強いコンテンツ制作会社に丸投げするのではなく、二人三脚で取り組んでいった。

 接遇マナーの内容については、そごう・西武で自社の社員教育を担当している社員がチェックした。また、教育現場には百貨店レベルの接客は必ずしも必要ではないので、必要な要素を抽出した。今回、記者が体験した約13分のコンテンツの場合、開発費用は数百万円かかったという。

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