レクサスUX コンパクトSUVと呼ばないで!池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/3 ページ)

» 2019年01月21日 06時30分 公開
[池田直渡ITmedia]

二律双生の中身

 そういう意味においてUXのプレスリリースの表題に踊る「都会派コンパクトクロスオーバー」とは詰まるところ何なのか?

 レクサスの人に問うと、このように説明した。「われわれはUXをコンパクトSUVとは呼ばれたくありません。UXの主題は走りであり、むしろクルマの素養としては従来のハッチバックの延長にあるのです。低重心化を図りつつ、ボディ剛性をがっちり上げて、アシをしっかり動かす。そういう意味ではLCと同じとは言いませんが、LCの持つ何かを感じさせるクルマに仕立てたつもりです」。

インテリアの質感は高く、シートの出来も良い インテリアの質感は高く、シートの出来も良い

 であれば、もっとフィジカルなドライブ体験を伴う言葉で表すべきなのではないか? 「都会派コンパクトクロスオーバー」からは主題であるはずの「走り」がどこからも感じ取れない。

 「都会派コンパクトクロスオーバー」という言葉は生煮え過ぎるし、「都会派」の部分は自己賛美が強すぎて適切とは思えない。そういうのは周囲が評価することであって、自ら名乗る言葉ではない。クロスオーバーも「何と何の」が欠落しているから定義にならない。残念ながらUXの本質を射貫く言葉をレクサスは用意できているとは筆者には思えなかった。

 SUVと呼ばれるのは嫌かもしれないが、その姿を見る限り、やはり共通理解としてSUVと書かせてもらいたい。

 さて、SUV的スタイルが「冒険者」につながっていく展開は分かる。しかし、それはあくまでも机上の話であって、現実のSUVでラフロードに分け入る人など極少数派だ。ましてやレクサスともなれば「よし、これ買ってダートを走るぞ」という人は皆無なのではないか? こちらに関しては、そういうフィジカルな冒険が「心躍る」を刺激するとは思えない。人々が求めるSUVテイストの乗用車に対して、「冒険者」という解釈、あるいは説明は、ズレているのではないか? 「いやだからただのExplorerじゃなくてUrban Explorerなのだ」と言うのかもしれないが、では「都市の冒険者」と言われて一定の共通認識が持てるのだろうか? 言葉とは鍵と鍵穴だ。対になっているからこそ機能するものだろう。

 このあたりは説明を聞いても、資料を読んでもすっきりと納得できなかったので、筆者はUXとは何なのかをずっと考えていた。筆者は現在のSUVを、セダンやハッチバックに代わる新世代のワゴンだと理解している。実はクルマによってはスペシャルティカーでもあるのだが、UXの居住空間を見るとワゴンの系譜と見て良いと思う。

 ワンボックス型のように高重心と低剛性によって走行性能を犠牲にすることなく、必要十分な室内空間を持ち、かつリヤの居住空間とラゲッジスペースを十分に備え、さらにラゲッジへのアクセスも優れているという意味では、UXは30年前の欧州でプレミアムであったセダンベースのワゴン、例えばベンツのEクラスワゴンのような位置付けにあるべきではないか? むしろそう考えるとUXのプレミアムに合点がいくのではないだろうか?

 それは上質感(プレミアム)と実用性(ユーティリティ)を高い次元で融合させたクロスオーバー「二律双生」だろう。ちなみにこの二律双生とはレクサスの造語で、相反する価値を同時に叶えることを言う。

 ただし、本来二律双生というテーマはもっと大きいのではないかとも思う。レクサスの基本軸としてもっともっと重視され、説明されるべき言葉だろう。

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