横審の“白鵬口撃”はいかがなものか 国際問題を招く可能性赤坂8丁目発 スポーツ246(2/4 ページ)

» 2019年01月29日 11時57分 公開
[臼北信行ITmedia]

横審の姿勢があらためて浮き彫りに

 稀勢の里には甘く、白鵬と鶴竜には手厳しい。こういういびつな横審の姿勢があらためて浮き彫りになった格好だ。

 ちなみに北村委員長が初場所後に行われた前出の横審定例会合で、引退した稀勢の里に「国籍うんぬんではなく日本人横綱としてがんばってほしかったけど、やむを得ない」と口にしていた点も引っかかった。この場で白鵬と鶴竜に鋭い舌鋒を向けておきながら、この国籍うんぬんの発言はデリカシーに欠けると言わざるを得ない。うがった見方をすれば「日本人横綱」だから稀勢の里を擁護(ようご)し、「モンゴル人横綱」であるから白鵬と鶴竜を酷評の末にペテン師扱いする――。そういう解釈をされても仕方がないだろう。

 日本相撲協会の関係者は、今回の定例会合の件ついてこのような疑問を投げかけた。

 「もう1つ、誰もが『おや?』と思ったのは、横綱の昇進のあり方について何ら議論が交わされなかったことだ。横審が世の人気に後押しされる格好で稀勢の里の横綱昇進を急ぎ、延命を手助けしてしていた感はどうしても否めない。それが結果的に稀勢の里の土俵人生を縮めてしまったのに、横審の人たちは何も反省材料にしようとしていない。

 要はメンバーを有識者ばかりで固め、プライドが高い人たちの集まりだから自分たちの非を認めようとしていない。日本人横綱の誕生を急ごうとする流れは、この先も繰り返されるはずだ。協会の中でも中堅クラスの役職を中心に『近年の横審は時代にそぐわずおかしい』と異論が噴出し始めている」

 横審の“暴走”は、すでに思わぬところにも飛び火している。白鵬や鶴竜の母国、モンゴルだ。

 以前から横審は白鵬が多用していた張り差しやかち上げに関して、「横綱らしくない」と注意するなど、何かとやり玉に挙げてきた。もちろん白鵬が猛省しなければならないところは多分にあるのだが、モンゴル国内では「なぜ彼ばかりターゲットになるのか」「背景に人種差別があるからではないか」などと、ほぼ擁護論で占められている。

 モンゴルの国民大会議議員の中からは「正式にモンゴル政府として日本に抗議し、政治的圧力をかけて横審を平等かつ公平の目で見られる“クリーン”な組織にするためメンバーの入れ替えを要求するべきだ」と真剣に訴えようとする動きまで出始めているという。

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