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» 2019年02月06日 08時00分 公開

何を捨て何をつかんだのか:南極で冒険家に突き付けられた「極限の選択」とは 阿部雅龍さんに直撃 (1/4)

南極点到達に成功した冒険家・阿部雅龍さんに直撃。豪雪などの荒天に阻まれる中、「無補給」という当初方針を転換した決断に迫る。

[服部良祐,ITmedia]

 1月17日、南極の単独・徒歩での遠征に挑戦していた冒険家、阿部雅龍さん(36)が南極点に到達した。通常取られるノーマルルートより難しいとされる「メスナールート」を、日本人として初めて踏破した。南米・チリなどを飛行機で経由し、南極大陸のロンネアイス棚氷から徒歩で南極点にたどり着いた。

 阿部さんはこれまでも3度の北極遠征を成功させてきたキャリアを持つ。ただ、初となる今回の南極遠征ではアクシデントに見舞われて苦渋の決断を余儀なくされた。当初目指していた「無補給」の方針を転換、食料の補給を受けたのだ。心身ともに極限を迎える中、冒険家はたった一人でいかに判断を下し、生還したのか。直撃した。

photo 南極点を制覇した冒険家の阿部雅龍さん

「過去最悪」の天候に立ち向かう

――阿部さんは南極点までの約900キロの道のりを、そりを引きながら55日間かけて単独・徒歩で踏破しました。遠征中は所属する事務所を通じてTwitterで「歯が欠けた」などと発信していましたが、実際の旅路はどうでしたか。

阿部: 体重は5キロ減りましたが、これは計算通りでした。確かに冒険中に奥歯が欠けましたね。マイナス30度では食料のアーモンドなどが氷のように固くなるため、(噛んだら)ガリっと欠けたんです。冒険中に歯が欠けるということはよくあるので、普段から前歯では食べないようにしていたのですが……。

 南極の風景は基本的に真っ白で変わりません。生物もいない世界です。ただ、僕の通ったメスナールートはクレバス(割れ目)が多かった。特に雪の下に隠れている「ヒドゥンクレバス」は注意して見ていないと分かりません。視線は真っすぐより若干うつむいて、足元のコンディションに気を付けて歩きました。遠征の前半は豪雪の中を歩き、後半は風速10メートルが吹く寒波に見舞われて体感気温は通常の南極よりも寒いマイナス35〜40度。顔が凍傷になりました。

photo 南極遠征で5キロ痩せた阿部雅龍さん

――アクシデントの影響で予定より15日遅れての踏破でした。

阿部: 今年は例年にない豪雪でした。本来南極は雪のあまり降らない地域なのですが、僕のスタート後1週間あたりでドカ雪が降ったのです。連日の(雪で視界が覆われ方向などが識別できなくなる)ホワイトアウトで1週間太陽が見えなかったこともありました。

 僕は110キロのソリを引っ張っていったのですが、ひざまでの雪をかき分けていくとほぼ歩けない。一番進まない時は時速0.8キロまで落ちました。テントがつぶれないよう夜中も雪かきするほど。そんな状態が3週間続いたのです。ホワイトアウトのため、自分が進んでいるのかどうかもGPSを見ないと分からない。

 冒険家をサポートする会社もこの天候を「過去最悪だ」と発表しました。僕の挑戦したメスナールートとそこに近いエリアであるノーマルルートでは、知る限り計8人の冒険家が挑戦しましたが、結局僕を含めて3人しか到達できませんでした。

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