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南極で冒険家に突き付けられた「極限の選択」とは 阿部雅龍さんに直撃何を捨て何をつかんだのか(4/4 ページ)

» 2019年02月06日 08時00分 公開
[服部良祐ITmedia]
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貫き通す「自分との闘い」

――悲願の白瀬ルートにはいつ挑戦しますか。

阿部: できるかは分かりませんが、今年やりたいですね。南極に行った感覚を持ったまま、2年連続で向かうのがベストなのです。資金確保も進めていきたいですね。実力があってもお金が無いと冒険は駄目ですから。

 アスリートはどんなに努力しても才能が無いと一番にはなれませんが、冒険家のいいところはやり方次第で夢が実現できる点です。冒険には体力、語学力など求められるものがたくさんあります。整っているフィールドが無いため、圧倒的な能力が1つあるだけでも駄目で、自分ですべてを作らなくてはいけない。そこが「競技」と違うところです。

 でも、(それらの能力を)組み合わせれば人のやっていないことができる。僕は自分が凡人だと分かっているから、いろいろやるだけです。やはり、大事なのは「自分」なのだと思います。

 今回、南極でベースキャンプと交信した時も、他の冒険家の位置を一切聞きませんでした。南極でまで人と比較していたらすごいプレッシャーになるので、なるべく雑音を入れないようにしていました。他の冒険家とやりとりする人もいるのですが、逆に僕はシャットアウトしていましたね。あくまで「自分との闘い」だったのです。

photo なぜかAIBOと南極を旅した阿部さん

――そんな南極の「非日常」から日本という日常に帰還したわけですが、今は何を感じていますか。

阿部: 長い冒険から帰ってくると、女性がみんなきれいに見えますね。南極のベースキャンプでも、まれに女性を見るとテンションが上がるものです。僕も生物なのでやっぱり何か希望が無いと。

 帰国後は記者会見を開いたり、地元・秋田で白瀬さんのお墓参りにも行きました。また、帰国2日目からはトレーニングを再開しました。東京マラソンにも出場する予定です。

 今回のメスナールートでの南極踏破は「日本人初」でしたが、僕の中では通過点。舞い上がっている場合ではないのです。冒険を志す多くの若者が目指すのが南極です。努力を重ねて諦めなければ、そんな世界の果てまでたどり着ける。そこまで駆け上がれるチャンスを得られたのが、今はうれしいですね。

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