動画アプリ「TikTok」のヒットが意味すること日本のベンチャー育成どうする?(1/2 ページ)

» 2019年02月08日 11時34分 公開
[中村洋介ニッセイ基礎研究所]
ニッセイ基礎研究所

 ショート動画配信アプリTikTok(ティックトック)が日本の若者の間でヒットしている。

 日本経済新聞社がまとめた2018年の「日経MJヒット商品番付」では、堂々「西の横綱」に選ばれた。「インスタ映え」という言葉が流行語になった写真共有アプリ「インスタグラム」に続く注目の存在となっている。

若者に大人気のTikTok(同社サイト) 若者に大人気のTikTok(同社サイト)

 TikTokを手掛けるのは中国のユニコーン(※1)企業、2012年創業のByteDanceである。同社のニュースアプリToutiao(今日頭条)等は中国で多くのユーザーを持つ。それらのプラットフォームは、人工知能(AI)を活用し、利用者それぞれが関心を持ちそうなコンテンツを提供するとのことだ。

 18年11月には、未上場企業ながら、日本のソフトバンクグループ等の投資家から30億ドル(1ドル112円換算で約3360億円)という巨額の資金を調達したと報じられた。その際の評価額(企業価値)は750億ドル(約8.4兆円)とも言われ、世界最大級のユニコーンとなった。

 中国企業の製品だと知らずに使っている若者も多いかもしれない。日本でTikTokがリリースされたのが17年の夏である。素直に「面白い」と受け入れられた結果、わずか1年程度で多くの日本の若者の心を鷲づかみにした。ユーザーが何度も起動するアプリになれば、ビジネスの可能性はより広がる。メディアとしての広告価値は高まり、メッセージアプリのLINEのように違った領域に横展開していく可能性もあろう。

世界では革新的なベンチャーが巨額資金を集めている

 TikTokのヒットからは、(1)中国で世界最大級のユニコーンが生まれている(=破壊的なイノベーションは米国のシリコンバレーだけで起きているわけではない)、(2)12年に創業した中国IT企業の製品が、日本であっと言う間に身近な存在になりつつある(=海外の若いハイテク企業が、一気に日本の市場を席巻する可能性がある)、という客観的な事実を改めて認識させられる。TikTokは動画アプリであったが、同様のことがAIや自動運転等の分野で起きないとも限らない。

 世界中でユニコーンと呼ばれる巨大ベンチャーが生まれている(図表1、2)

ユニコーンの社数 ユニコーンの社数
主なユニコーン 主なユニコーン

 評価額(企業価値)が大きいということは、それだけ巨額の資金を集めて事業に投下しているということだ。優秀な人材をかき集め、研究開発やマーケティングに巨額の資金を使う。そして、国や業種の壁を越えて、新たな市場の獲得を目指している。このような激しい競争の中で、日本は立ち回っていかなくてはならない。

※ 一般に、創業10年以内で企業価値が10億ドル以上(1ドル=112円換算で1120億円)の未上場ベンチャー企業を指す。

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