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「組織の中で我慢」を強いる教育とは決別せよ「忍耐・協力・礼節」だけでは何も変わらない(6/7 ページ)

» 2019年02月18日 06時45分 公開
[多田慎介ITmedia]

「会社なんて飽きたら潰せばいい」

青野: 私の場合もちょっと似ているのかもしれません。「東証一部上場企業の社長が会社という存在をディスっている」という構図を面白いと言ってくれる方が多いんです。本来なら「会社は永続させるべきだ」と言う立場の人間が、「いや、会社なんて飽きたら潰せばいいんじゃないの」と言っているのが面白くて、話を聞いてもらえるという。

 以前、連合(日本労働組合総連合会)会長の神津里季生さんと対談をした際には、「同意のない転勤は人権侵害だ。これはなくすべきだ」と申し上げました。連合さんがなかなか言わないことも私は言おうと。

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工藤: 教育現場でも同じような構図があります。

 以前、教育委員会にいた頃には、組合さんが毎年交渉に来るんですよ。年度始めと終わりに来て、紙に書かれた内容をもとに交渉をする。私は「交渉される側」なので、本来なら無難にその時間を終わらせるものなのかもしれませんが、面談の後に「言いたいことはそれだけですか? もっとよくしたいと思いませんか?」と声をかけたんです。

青野: すごい! 「本音はもっとあるでしょう」と?

工藤: はい。「まだ帰らないでください」と言いました(笑)。「セレモニーをやって終わりじゃなく、一緒に考えましょう」と。

青野: 目標を合わせようということですね。そうした交渉ごとの場も形だけが残ってしまっているのかな、と感じます。「もともとは何のための場だったんだっけ?」と考えなきゃいけない。

 教育が変わろうとしているのだから、大人たちの社会も変わっていかないといけませんね。経済界から「こんな子どもを育ててほしい」というリクエストがあれば、教育界も動きやすくなるというのはよく言われますよね?

工藤: そうですね。

青野: 経済界はかつて、工業化社会の中で「会社の言うことをよく聞く勤労者をたくさん育ててほしい」と考えてきました。でも、これではもう会社が生き残れない。「もっと自律的に動く若者を育ててほしい」という声が高まっています。「組織の中で我慢しなさい」という教育はもういらないんですよ。

工藤: 実際に経営者の意識は変わってきていますか?

青野: そう思います。サイボウズでは、かなり自由度の高い環境で社員に働いてもらっています。10年くらい前は「そんなことをやっている会社はうまくいかないだろう」と見られていました。でもサイボウズの業績が伸び続けていることで、「もしかしたらあのやり方がいいのか?」と世の中の見方が変わってきた。大企業の経営者からも「やり方を教えてほしい」と声がかかるようになったんです。

 だから私たちは、「副業を解禁したらリターンのほうが大きかったです!」といった最新の事例を、これからも声を大にして発信し続けていきたいと思っています。

工藤: 青野さんの本を読んだんですが、「会社もこうやって変わっているんだな」と思いました。そんな会社がどんどん増え、あちらこちらで改革が起これば世の中は確実に変わりますよね。

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