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» 2019年02月18日 06時45分 公開

「忍耐・協力・礼節」だけでは何も変わらない:「組織の中で我慢」を強いる教育とは決別せよ (1/7)

「固定担任制」廃止、宿題も廃止――。公立とは思えない改革を続けている麹町中学校の工藤勇一校長と、働き方改革の先頭を走るサイボウズの青野慶久社長に、これからのあるべき教育の姿や組織論を語ってもらった。

[多田慎介,ITmedia]

編集部からのお知らせ:

本記事は、書籍『「目的思考」で学びが変わる 千代田区立麹町中学校長・工藤勇一の挑戦』(著・多田慎介、ウェッジ)の中から一部抜粋し、転載したものです。


 「どこで、何曜日に、何時まで働くのか」。働き方改革の先頭を走る企業として注目されるサイボウズでは、社員全員が自らの働き方を宣言し、実行しているという。社員に「自立」を求め続ける代表取締役社長の青野慶久氏と、子どもたちに「自律」を求め続ける麹町中学校校長の工藤勇一氏。経済界と教育界を代表する2人の改革者が、変化の時代に必要な学びについて語り合った。

photo 工藤勇一氏・千代田区立麹町中学校 校長(左)と青野慶久氏・サイボウズ社長(右)(撮影:稲田礼子)

固定担任制を廃止した理由

photo 青野慶久氏:1971年生まれ。愛媛県今治市出身。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工(現パナソニック)を経て、1997年8月愛媛県松山市でサイボウズを設立。2005年4月代表取締役社長に就任(現任)。社内のワークスタイル変革を推進し離職率を6分の1に低減するとともに、3児の父として3度の育児休暇を取得。総務省等の働き方変革プロジェクトの外部アドバイザーや一般社団法人コンピュータソフトウェア協会の副会長を務める

青野: 麹町中学校では、公立だとは思えないような改革がどんどん進められていますね。

工藤: 今年度は、改革の大きな柱の一つとして固定担任制を廃止しました。従来は1学級に1人の担任を固定するのが当たり前でしたが、これをなくしたんです。1人の担任に生徒のすべてを委ねるのではなく、チームでもっともベストな対応を行えるようにした仕組みです。病院における「チーム医療」のようなものです。面談の期間になると、保護者から「どの先生と面談したいか」の希望を出してもらっています。もちろん生徒もですよ。

青野: 会社も同じで、「上司と合わないな」と悩んでいる社員がいても、他の上司に相談できる方法があれば救うことができるかもしれません。子どもにとっても、自分で「どの先生を頼るか」を選べることは大きいですよね。

工藤: そうですね。サイボウズさんでは「自立」をキーワードにしていると思いますが、私は一文字違いの「自律」を掲げています。意味するところはサイボウズさんと同じだと思いますが、自分の力で生きていける子どもを育てることが大きな目的なんです。自分の力で生きていける子とは、別の言い方をすれば「人のせいにしない子」ですね。

青野: まさに私も同じことを考えています。

工藤: でも従来の学校では、「人のせいにする仕組み」ばかり作られているように思うことがあります。

青野: 人のせいにする仕組み、ですか?

工藤: 固定担任制はまさにそうです。ある担任が、うまくクラスをまとめられない状況に陥っているとします。もちろん背景にはその教員の力不足もあるかもしれません。すると職員室では「あの担任だったら問題が起きるのは当然だな」という雰囲気になる。クラスにいる子どもたちも「うちのクラスは落ち着かないな。あの先生だからしょうがないよな」と考えるようになってしまう。

 でも固定担任をなくせば、職員室の教員たちは「どうやって自分の得意分野を生かすか」を考えるようになります。子どものSOSのサインを見抜くのが得意な教員もいれば、保護者対応に長けた教員もいる。それぞれがワークシェアをするようになるんです。そうやって接していけば、結果として子どもたちも人のせいにしなくなり、自律のスイッチが入っていきます。

青野: なるほど。先生たちの間にチームワークが生まれるやり方なんですね。

工藤: これを運営するためにはマネジメントが大切です。問題に柔軟に対応して、適材適所で教員の強みを生かせるマネジャーがいるかどうか。これが学校運営の肝だと考えています。

青野: 私はよく「これからのマネジャーに求められるのは石垣を組む能力だ」と言っています。一つひとつの石の形を見ながら、「ここだったらこの石、あそこにはこの石を……」と当てはめていく。そんな感覚です。

工藤: 大切な力ですよね。青野さんの著書『会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。』を読んで、私と似た感覚だなぁ、と感じました。

photo 工藤勇一氏:千代田区立麹町中学校校長。1960年山形県鶴岡市生まれ。東京理科大学卒。山形県・東京都の中学校教諭、新宿区教育委員会指導課長などを経て、2014年4月より現職。 現在は安倍首相の私的諮問機関である「教育再生実行会議」の委員をはじめ、経産省「EdTech委員」、産官学の有志が集う「教育長・校長プラットフォーム」発起人など多数の公職についている。18年12月に『学校の「当たり前」をやめた。 ― 生徒も教師も変わる! 公立名門中学校長の改革』(時事通信社)を上梓
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