#SHIFT

退職時にこそ猛烈に仕事をすべき2つの理由「お金」と「仕事」の本当の話をしよう(3/4 ページ)

» 2019年02月27日 06時00分 公開

世間の狭さを侮るな

 では、もう二度とその会社で働かないのであれば、悪いシグナルを発してしまっても問題ないのだろうか。私はそうは思わない。なぜなら「地球」のサイズは昔から変わっていないが、「世間」のサイズは急速に狭まっているからだ。

 現在、人類は過渡期を迎えている。新しい技術によって人の労働力が代替されつつある。その流れで日本の終身雇用が終息し、転職市場が活性化しつつある。同時に新技術は企業セクター間での合従連衡を巻き起こす。例えば、JPモルガン・チェース銀行は今後のライバルを同業他社でなく「決済を握るAmazon」と言い切っている。ソフトバンクグループは投資ファンドに変貌を遂げ、KDDIも異業種案件で脚光を浴びている。掃除機メーカーのダイソンは自動車製造に着手し、教育コンテンツで有名な学研は「ゆりかごから墓場まで」といわんばかりにシニアホーム事業の買収にまい進している。

 私のつたない人生経験に照らし合わせてみても、思い当たることは多い。例えば、証券会社時代の先輩が、今や完全にキャリアを変えて生命保険の営業に来てくれた。また、ベンチャー経営時代の取引先社長とは個人的なご縁が続いており、現在、私が営む社会課題解決型のインパクト投資ファンド「ミッション・キャピタル」に対する資金調達へ多大なるご支援を下さった。さらに、6年前に飲み会で知り合った投資家のE氏とは親密な関係が続いており、彼の結婚式にも参席した。後日、E氏はミッション・キャピタルにとある有望な遺伝子系ベンチャーを紹介してくれ、私はそのご縁で同社に最近投資をしている。

 世間の狭さを物語る究極の例も紹介しよう。外資系証券時代の先輩にT氏がいる。私が10年後に移籍したユニゾン・キャピタルでも偶然同じ職場で働くことになった。さらに、T氏は私の兄と同じ中高出身だ。おまけに、T氏の奥様が私の姉の元同級生ということが判明した。T氏とは今でも時折仕事でご一緒している。

 誰とどこで遭遇するのか。いつ、お互いの人生が交差するか。誰にも分からない。世間の狭さを、決して侮るべきではない。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.