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ドワンゴ新社長・夏野剛が明かす“N高のミライ” 小中学生向けプログラミング塾「Nepps」の狙いとは日本の教育に欠けているもの(3/4 ページ)

» 2019年03月02日 05時00分 公開
[河嶌太郎ITmedia]

慶應や筑波大学に進学

 N高の強みについて、夏野氏はこう続ける。

 「プログラミングでこうした実績を残すと、大学進学でもAO入試や推薦入試で極めて有利です。既に慶應義塾大学や筑波大学などへの合格者が出ています。進学以外の進路でも、職種別求人倍率は、技術系IT通信だと現在8倍を超えています。他の産業においてもプログラミングができることは重要になっていて、職種としてのエンジニアを目指さない方であっても、プログラミングの基礎を身に付けたことは人生において非常に役立つと思います」

phot 職種別求人倍率は、技術系IT通信だと8倍を超えている(DoDa転職求人倍率レポート)

 こうした取り組みを早期に味わえるというのが、「Nepps」の魅力と言えそうだ。「Nepps」は今後、企業提携についても視野に入れながら、全国規模の展開を目指す。

 N高は今後どのような方向に進んでいくのだろうか。ITmedia ビジネスオンラインの取材に対し、夏野氏はこう明かす。

 「今の教育制度に合わないのではなく“合わせたくない”というポジティブな意志を持つ若い人に、何らかのチャンスや機会を提供していきたいと考えています。教育という字は『教え育てる』と書きますが、これだけ情報が一般化し、ネットで調べればグーグル先生が何でも教えてくれる状況になってくると、単に教え育てる上では、ネットでいくらでも知識は得られてしまいます。では、何がわれわれにできるのかというと、機会を提供する、チャンスをたくさん提供することが重要になってくると思っています」

 N高在籍者の顔ぶれを見ると、フィギュアスケート女子の紀平梨花選手や、eスポーツサッカーの相原翼選手など、生徒の活躍も目立つ。特に紀平選手は大舞台である四大陸選手権の合間にも、ホテルで英語の勉強をしていると報じられ、話題を集めた。

phot 紀平選手はN高に通いながら「世界」で戦っている(N高等学校のWebサイトより)

 「例えばスケートで世界にチャレンジしている子どもでも、きちんと高校の卒業資格を取りたいとなると、これまではどこかの高校に在学し通学する必要がありました。それでは『スケートがない期間は学校に行きなさい』となるわけですが、そうすると朝8時半から午後4時ぐらいまでは学校に拘束されるわけですね。その時間は練習ができないという形になってくると、機会を奪うとは言いませんけど、少なくとも機会の提供はしていないわけです。その点、N高では、昼間だったらスケートリンクがあいているのだから、昼間練習して、夜自分の好きな時間に遠征中でも勉強可能な教育の機会を提供できる。それがN高の強みだと思っています」(夏野氏)

 最後に日本の教育の今後について、夏野氏はこう話す。

 「将来的には高校や中学の生徒そのものが柔軟になっていく方向だと思います。通信制という仕組みを使い、いち早く現行の法体系と制度の中で一番新しい形を実現しようというのがN高の試みです。今後も、日本の教育制度の行く道の先取りをしていきたいと考えています」

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