「バイトは教育で真人間にしろ」が、ブラック企業につながる理由スピン経済の歩き方(6/8 ページ)

» 2019年03月12日 08時10分 公開
[窪田順生ITmedia]

研修を受けても、賃金は据え置き

 不祥事のたびに研修、また何か問題が起きれば研修、というサイクルは、マネジメントや経営陣からすると、しっかりと対応をしてます感をアピールする格好の施策なので安心感がある。しかし、「やらされる側」からすれば日常業務以外の余計な仕事を増やしているだけに過ぎない。

 研修や勉強会というのは決して悪くはないが、それもあまりに行き過ぎると、非正規雇用という弱い立場の人間に対して、責任や義務だけを増やすだけの結果にしかならないのである。

 というような話をすると、「だったらどうすりゃいいんだ! 文句ばっか言いやがって」とキレる人も多いだろうが、この問題を解決する道は一つしかない。

 賃金を上げるのだ。

 研修や勉強会が増えてバイトが疲弊するのは、そこに「見返り」がないからだ。こういうマナーも身につけろ、会社の代表という自覚を持て、と義務や責任だけを押し付けられて、「これが働くってことだ、分かったか」の一言で終わらされているからだ。

 では、そうならないためにどうするかと言うと、バイトに適正な「見返り」をするのだ。

 企業がバイトに研修や勉強会を行うことは、労働者としての「質」を上げたということだ。労働の「質」が上がったのだから当然、その労働の代価である賃金も上がらなくてはいけない。

 しかし、現実はいくら研修や勉強会を施しても、賃金は上がらない。むしろ、研修や勉強会で「質」を上げてやったんだから今以上にしっかり働けよ、と言わんばかりにむしろ、「賃金据え置き」の根拠とされているのだ。

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