「バイトは教育で真人間にしろ」が、ブラック企業につながる理由スピン経済の歩き方(7/8 ページ)

» 2019年03月12日 08時10分 公開
[窪田順生ITmedia]

日本の「ブラック社会」

 いくら勉強しても、会社のフィロソフィーや200ページのマニュアルを暗記しても、はじけるような笑顔で接客をしても、時給はたいして上がらない。「がんばり」が「結果」につながらないのに、義務と責任だけは右肩上がりしていく。

 時間の切り売りで働く学生や若者たちが、「こんな仕事、いつ辞めてもいいや」となってしまうのは無理もない。そういう自暴自棄な若者は、その場のノリで後先考えずにバカをやる、のはいつの時代も変わらないのだ。

 賃金を上げろ、というと「無責任にそんなことを言うな! 賃金を上げたら利益も落ちて、成長も鈍化するので結局、人を雇えなくなって世の中が悪くなるんだ!」と、日本が滅びるくらいのことを言っている人も多いが、低賃金労働者を犠牲にしないと成長できないような企業が溢れかえるほうが、よほど日本の「危機」である。

 昔はバイトという「使い捨て」を有効活用して企業が成長できたが、これからの日本は労働人口も急速に減って、消費者も減っていく。人間を「使い捨て」にするようなビジネスモデルは、遅かれ早かれ通用しなくなる。

バイトや非正規という「使い捨て労働者」を前提としたビジネスモデルで全国展開をしてきた宅配、コンビニ、外食チェーンなどでことごとく「クライシス」が発生しているのが、その証左だ。

 「バイトテロ」騒動時、「仕事というのはカネだけじゃない、働く喜びがあることをバイトにしっかり教えてやるべきだ」とかのたまう専門家が大勢いたが、このあたりが日本の「ブラック社会」をよく示している。

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