Appleの純資産は7年前から減少? 投資家目線なら分かるその理由【全文公開】Appleの財務を分析する(7/7 ページ)

» 2019年03月13日 13時28分 公開
[hiroITmedia]
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稼いだ利益を超える額を株主に還元するApple

 2013年から2018年までの累積利益2800億ドルに対して、同期間の累積総還元額は3100億ドルです。

 お風呂に100リットルのお湯を入れても、120リットルのお湯を抜いたらお風呂のお湯は減ります。Appleのお風呂(純資産)には今も大量のお湯(利益)が注がれていますが、それ以上のペースで排水(株主還元)されているので、お風呂(純資産)の量は減っています。

 総資産に占める純資産の割合を自己資本比率と言います。一般的には、自己資本比率が高い方が財務は健全といわれますが、Appleの自己資本比率は下がり続けています。

Appleの自己資本比率推移 (ソース:Apple年次報告書)

 自己資本比率の低下は投資家にとって悪い知らせなのでしょうか。いえ、そんなことはありません。なぜなら、Appleは赤字を垂れ流して純資産を食っているのではなく、稼いだ利益を還元するために純資産を食っているからです。このような積極的な株主還元で純資産が減少し自己資本比率が低下するのは、優良米国企業ではよくあることです。

 Appleは今や成熟バリュー株に変貌しています。同じGAFAの仲間だからといって、無配で成長企業のAmazonと同列で語ることはできません。それが数字からはっきり読み取れます。

著者:hiro

1987年生まれ。大学在学中に公認会計士試験に合格。大手監査法人を経て、現在上場企業の経理部に勤務。2012年にインデックス投資を始め、現在は米国株投資に傾倒。2016年より投資ブログ「Grow Rich Slowly」を運営。

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