土肥: 当初の目標300人に対し、実際には2万人ほどが登録したわけですが、その理由はどのように分析していますか?
イオナ: 労働市場にギャップがあったからではないでしょうか。企業側は「女性のエンジニアを増やしたい」と思っていても、なかなか増やすことができない現実があるんですよね。応募してくる履歴書を見ると、99%は男性というケースもある。じゃあ、なぜ女性は応募しないのか。「IT企業で働きたい」「エンジニアとして活躍したい」と思っていても、その分野で働いた経験がないので、応募することができないんですよね。
企業は女性を求めている。女性も働きたいと思っている。しかし、両者の間で乖離(かいり)があって、その距離を埋める手段がありませんでした。こうした課題があったので、オンライン学習に申し込む人が多かったのかもしれません。
土肥: 女性向けにコンテンツをつくられているわけですが、何か工夫をしているのでしょうか?
イオナ: AIや機械学習といったテーマを学ぶときに、他社のテキストではどのように説明しているのか。調べたところ、自動運転のクルマなどで解説しているんですよね。ただ、クルマに興味がない、免許を持っていない人にとって、自動運転のクルマが登場してきてもなかなか興味を抱くことはできませんよね。
じゃあ、ワタシたちはどのような工夫をしているのかというと、例えば、ECサイトのベビー商品の売り上げを予測するなど、女性にとってできるだけ身近に感じられることを取り上げています。
土肥: ふむ。ただ、一般企業でも同じようなサービスを提供しようと思ったらできるはず。それなのに、なぜ「1 Million Women To Tech」に申し込む人が多いのか、まだ理解できなくて。
イオナ: これは個人的な意見になりますが、ワタシたちは会社ではなくて、非営利団体であることが大きいのかもしれません。サービス内容でうまくいかないことがあっても、利用者に「うまくいかないことがでてきた。これこれこういうことなのですが、どうしたらいいでしょうか?」と相談を投げかけると、すぐに返事をもらえるんですよね。そして、それを反映することができる。
こうした対応をとることは、特に大企業では難しいかもしれません。「間違えてはいけない」「失敗は許されない」といった感じで、会社のブランドを優先して、得体の知らないなにかにおびえている。そうした姿勢からはなかなか寛容性が生まれにくいので、提供する側は「間違えてはいけない」ことを恐れ、受けている側は「間違え」を過剰に指摘する。非営利団体のワタシたちはそうしたことを考えなくてもいいので、思い切ったことができる。結果、受講者を増やすことができたと思っています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング