2004年といえば、前年に少子化社会対策基本法ができて本格的な「人口減少社会」の到来が叫ばれ始めたタイミングだ。商圏内の人間が減少して急激に高齢化していくというのに、商圏内を店舗で塗り潰そうとしていたのである。
現在の店舗数からも分かるように、この戦略が実行されることはなかったが、小僧寿しという会社が平成になってもなお、昭和の右肩上がり幻想を引きずっていたことがうかがえよう。
そしてこのような傾向はつい最近まで見られた。2013年、小僧寿しの営業赤字が過去最悪を記録した。原因は、当時の社長が就任以来進めてきた、「宣伝広告費大量投入」と「安売り路線」である、と当時の経済メディアは報道している。
要するに、競合よりも安い寿司を提供して、テレビCMをバンバン放映すれば、客がガンガンやって来るだろう、という戦略が大ハズレしてしまったというのだ。
人口が急速に減少していく中で、寿司の国内需要さえも減っている中で、どうにかして店に訪れてもらいたいということで、回転ずしチェーンはさまざまなユニークな商品や施策を編み出している。そういう「人口減少」を前提として、独自の付加価値を提供をするという考え方が、小僧寿しからあまり感じられないのは、筆者だけではないはずだ。
このように書くと、小僧寿しをディスっているように聞こえるかもしれないが、そんなことはなく、日本人の食習慣を変えた偉大な外食チェーンだと思っている。それまで高価な寿司が、小僧寿しが登場したおかげで、安く家庭で食べられるようになったのだ。
小僧寿しが成し得た「寿司の庶民化」は、セブン-イレブンの「コンビニ」、ヤマトの「宅急便」と並び評されるほどの功績であることは疑いようがない。
しかし、その一方で、人口増加の波に乗って、日本に新しい文化を定着させた企業が相次いで苦境に立たされているのも事実だ。ヤマトは残業代未払いや過重労働の問題が噴出し、ドライバー不足などによる「宅配クライシス」が大きな問題となった。セブンは、重労働の割には低賃金ということで慢性的なバイト不足でFCオーナーが疲弊して、「24時間営業」という根幹が崩壊しつつある。
そして、「寿司の庶民化」のパイオニアである小僧寿しも青息吐息である。
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