「蒙古タンメン中本」“からうま”ブームの真相 激辛に徐々に慣れさせる仕掛けとは?長浜淳之介のトレンドアンテナ(5/6 ページ)

» 2019年04月02日 11時25分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

池袋に出店してブレーク

 蒙古タンメン中本が全国区の人気を得るようになったきっかけは、01年にオープンした池袋店(現在の西池袋店)の成功だろう。

 白根氏は、自身が辛さのあまり完食できなかった経験を踏まえ、初心者に対してはあまり辛くない「味噌タンメン」から入ることを勧めている。野菜がしんなりとするまで煮込まれており、鍋料理のように肉野菜のエキスがスープに溶け出している。徐々に辛さに慣れてから看板メニューである辛子麻婆豆腐が入った蒙古タンメンに進むことを想定している。辛いものが本当に苦手な人や子どもに対しては、辛くない塩タンメンも用意している。

 辛さを0から10まで分け、お客が見やすいように店の内外に掲示してあり、メニュー名だけでは分かりにくい辛さが見える化されている。

 蒙古タンメン中本の池袋店がオープンした当時、池袋は「ラーメンの聖地」と呼ばれていた。昔からの行列店「大勝軒」をはじめ、「えるびす」、「屯ちん」、「光麺」、「麺屋ごとう」(現在は駒込に移転)などがしのぎを削っていた。その群雄割拠の状況で、蒙古タンメン中本は“からうま”というジャンルを確立し唯一無二の存在感を誇っていた。

 そして、08年にセブンが発売したカップ麺により、人気が定着したといえるだろう。セブンのパートナーであり、カップ麺を製造する日清食品の再現力には定評がある。スープの味のみならず、中太麺の少しボソっとした重量感ある感じも見事で、ラーメン評論家たちからの評価も概して高い。現在の定番商品はリニューアルを繰り返して4代目となる。

 「基本的には弊社と日清さんで企画して、中本さんに試食してもらって味に関するアドバイスを受ける流れです。北極ブラックのような限定商品は、お店の限定メニューから選んでいますね」(セブン広報)

 蒙古タンメン中本の目標は全国制覇。カップ麺の売れ行きは好調で、地ならしは着々と進んでいるように見える。しかし、いまだ首都圏から出ていないことから、人材育成が難しいのだと推察される。

 12年にのれん分けした蒲田店(東京都大田区)は、蒙古タンメン中本の元社員が独立した店だった。しかし、その元社員は次第に店に立たなくなり、女性スタッフがワンオペで運営するようになるなど問題行動が多く、14年に契約を解除して閉店となった。本件は訴訟となったが、最終的に元社員が蒙古タンメン中本の店に立ち入らない、類似する店を経営しないとの約束で和解した。ところが、15年に元社員は「荒木屋」という店をオープンした。同店は、蒙古タンメン中本側から見ると、ノウハウを活用した類似店であった。一方の荒木屋側は、オリジナルだと主張している。

 以上のいきさつは蒙古タンメン中本の公式Webサイトから確認できるが、荒木屋が全くの模倣店かどうかは微妙と考える向きもある。

 このように、チェーンストア経営の難しさが浮き彫りになっているが、出店を加速するには、ファンに寄り添えるような店長の育成や、忠誠心を持つ独立志望者のスキルアップをさらにスピーディーに行うことが必要だ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.