「人手不足」の本質が「低賃金」だということは、1967年の日本生産性本部の調査でも明らかになっている。調査を報じた記事の見出しが分かりやすい。
『低賃金、耐えられぬ 大半が「もっと大規模」へ移動』(読売新聞 1967年6月26日)
中小企業が中途採用した若年労働者が、なぜ定着しないのかを調べたところ「低賃金」に失望したという理由がもっとも多かったのだ。
つまり、人口が右肩上がりで増えていた時代の日本では、「人手不足で倒産しました」という話は、「ああ、低賃金労働者が確保できなくて倒産しちゃったのね」という受け取られ方だったのである。
それがなぜ今のように、「人手不足=人口減少が招いた弊害」みたいなイメージに変貌してしまったのか。
ターニングポイントはバブル期あたりに、信用調査会社が「人手不足倒産」というキャッチーな言葉を生み出したことにある。この新たなトレンドを日本経済新聞は以下のように報じている。
『「人手不足倒産」――最近、こんな耳慣れないことばが登場してきた。特に、大都市圏への労働者の流出に悩む地方で、好況下の倒産が増えている』(日本経済新聞 1989年4月2日)
記事では、愛知県の建設会社が、受注高が上向いていたにもかかわらず、鉄筋工など職人の確保ができず、工事が遅れたことで倒産したケースを引き合いに出して、「労働需給のひっ迫による賃金上昇で、企業収益は圧迫され始めている」(同上)と結んでいる。
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