インタビュー
» 2019年04月10日 08時00分 公開

ゴーン報道の「第一人者」が語る【前編】:ゴーンという「怪物」を生んだのは誰か 日産“権力闘争史”から斬る (4/5)

[服部良祐, 今野大一,ITmedia]

「化けの皮」がはがれた

――一連の事件が起きたとされる時期も、確かに「変質後」のタイミングと一致するようですね。

井上: 本事件と絡めると、特別背任容疑での立件内容の1つは、自身の資産管理会社を通じた為替スワップ取引で多額の損失が出たため、08年に評価損を日産側に付け替えた、というものです。(金融商品取引法違反として立件されている有価証券報告書の)虚偽記載も10年からとされています。経営者としての「化けの皮」がはがれ、会社の私物化も進んだのではないでしょうか。

 独裁が進む一方で、現場はどんどんひどい状態になっていきました。完成検査の不正問題でも、17年に内部告発がありました。法律で決まった検査をきっちりやらなかったのは、検査員の数を減らしコスト削減をしたのも要因としては大きかったのです。社員の中には「ゴーン流経営」に我慢ならなかった人も多かったのではないでしょうか。

――確かに独裁が社内の反発を生み、逮捕に至る内部通報を生んだ経緯は理解できます。一方で、かつて日産の第二労組トップとして権勢を誇り、社内の敵派閥から女性スキャンダルをマスコミにリークされて失脚した塩路氏の例を見ると、ゴーン事件は日産の歴史の中で実は特殊な例でもないという印象を受けます。

井上: 日産は「都会のエリート」が集まり、彼らは自分にプラスかどうかでしか社内で判断をしない。いわば“権力のモンスター”が生まれやすい土壌があったのです。モンスターを制御できなくなり外の力を借りようとして、塩路氏の問題もゴーン事件も起きたのではないでしょうか。塩路氏の件は(労組トップが会社権力を乱用しているという)労使の話であり、本来は社内で解決すべき問題でした。しかし、マスコミに写真を渡して女性関係やヨットの問題を書き連ねさせ、「こんなひどい労組のトップがいる」と追い出したのです。

 本来なら「塩路さんおかしいですよ」と社内で指摘すべきだったのです。ゴーン問題も、社内のコーポレートガバナンスが効いているところで処置すべきだった。刑事事件化するかはさておき、社内の内規に触れている話が多かったのですから。取締役会で会長の解任動議を出すべきで、その後に刑事告発するのがきれいな流れだったと思います。

 しかしそれはできない状況だった。(実力者の1人だった)志賀氏と西川社長の仲が悪く、日本人取締役が一枚岩となってゴーン前会長の行為をただすことができず、ゴーン前会長と差し違える度胸もなかった。引きずりおろせないほどゴーン前会長も“モンスター化”していて、検察という国家権力を利用するしかなかったのです。日産は違うと言っていますが、これは「クーデター」だと見られても仕方ない。企業が不祥事を解決する方法としては異例だから、そう言われるのです。

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