海外でも議論噴出 なぜ「高齢ドライバー」の運転を止められないのか世界を読み解くニュース・サロン(2/4 ページ)

» 2019年04月25日 07時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]

増え続ける、高齢ドライバーによる死亡事故

 まずはっきりさせておきたいのは、日本は何も対策していないわけではない。2017年3月、改正道路交通法が施行され、高齢ドライバーの認知機能検査を強化している。

 しかしこうした対策にもかかわらず、警視庁によれば、18年は75歳以上の高齢ドライバーによる死亡事故が460件も発生している。またこれらドライバーのうち、半数近くが「認知症の恐れ」か「認知機能低下の恐れ」があったという。

 しかも、75歳以上のドライバーによる死亡事故件数は年々増加傾向にある。ということは、やはり新たな対策が必要だと考えられるのだ。では、どんな対策があり得るのか。

photo 高齢ドライバーによる死亡事故の増加に対して、新たな対策が必要だ(写真は記事と関係ありません)

 英国では、フィリップ殿下の一件の後にこんな議論になった。まず、医師から運転をやめるようアドバイスされたら、直ちに運転をやめさせるべきだということ。また英公共放送BBCは、運転に支障をきたしそうな、体に問題がある高齢者は免許を返納すべきだと書いている。これらは当たり前の話である。

 また家族が高齢ドライバーをしっかりとチェックする必要があるという声も上がっていた。

 英国では高齢ドライバーであっても、免許の更新時には運転テストや医学的なチェックはなく、ただ自己申告をすればいいだけだという。英国の自動車関連団体などは、どんな形でも規制をよしとしておらず、高齢ドライバーの問題でも、そこは更新時の規制ではなく、家族が止めるべきだと主張しており、そうした見解もあって現状のような緩い更新が続いている。

 ただそんな緩さが、高齢ドライバーの家族を苦しめているとの指摘もある。なぜなら、彼らが高齢ドライバーに運転をやめるよう説得しなければならず、それは実に骨が折れるからだ。

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