上川口屋は元々、お土産として重宝されるような比較的高価な「あめ」を取り扱っていたあめ屋だった。現在お店を構えている場所は、かつては加賀藩・前田家が治めていたという。その前田家から気に入られた上川口屋は境内での営業を許可され、それから約240年、この地で営業を続けている。
上川口屋が駄菓子屋に転身したのは1950年頃。きっかけとなったのは、それまであめをつくっていた職人が急死したことだった。あめの材料費も高騰しており、戦後の貧しい時代に高級あめ屋として営業を続けていくのは限界だと判断した。
「あめ屋を閉める時、私はまだ子どもだったので、歴史ある“あめ屋を閉める意味”をあまりよく分かってなかったんです。今となっては、もったいなかった気もしますね。『上川口屋のあめはおいしい』って、けっこう有名だったんですけど……」と内山さんは当時を振り返った。
実は、これまでに「上川口屋のあめを復活させたい」と他社から声を掛けられたことが何回かあったという。だが、つくり方を記したレシピなどを残していなかったため、上川口屋のあめのつくり方は職人が亡くなった時に一緒に失われてしまっていた。
「私も上川口屋のあめをもう一度つくりたいという気持ちはありました。声を掛けていただいた企業と試行錯誤し、私の味覚を頼りに試作品をつくってはみたんですけど、やっぱり何かが違う気がするんです。結局、再現させることは難しいと諦めました。今は駄菓子屋一本です」
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