「ねるねるねるね」が再成長 “健康に悪い”イメージを払拭できたワケ最大の“売り”が裏目に(1/4 ページ)

» 2019年02月22日 06時00分 公開
[中澤彩奈ITmedia]

平成のV字回復劇場:

 戦略ミス?競合の躍進?景気のせい? どうして赤字になってしまったのか。どうして顧客は離れていってしまったのか。そして、どのようにして再び這い上がったのか。本特集では紆余曲折を経験した企業や自治体などの道のりを詳しく紹介する。

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 発売から30年以上経った今も、多くの子どもから親しまれるお菓子がある。これまで8億個以上も売り上げてきた「ねるねるねるね」だ。粉と水を混ぜると色を変えながらモコモコ膨らむ不思議さに、ワクワクした経験のある読者も多いのではないか。

 そんなねるねるねるねがいま、再成長を遂げてる。発売直後に一気に伸びた売り上げは徐々に落ち込み、2010年にはピーク時の半分まで減少していたが、ここ数年で右肩上がりに跳ね上がったという。

 なぜ、ねるねるねるねは人気を取り戻すことができたのか。販売元であるクラシエフーズに話を聞いた。

photo 発売から30年以上、ロングセラー商品「ねるねるねるね」

最大の“売り”が裏目に……

 ねるねるねるねが1986年に発売された当初、店頭価格は100円だった。当時のお菓子は数十円程度が相場だったので、強気の価格設定だった。社内からは「100円のお菓子なんて、高すぎて売れない」と心配する声が相次いで挙がっていたという。

 だが、そんな心配をよそに、ねるねるねるねは発売直後から売り上げを伸ばし一躍大ヒット。日本中の子どもたちがたちまち夢中になった。

 「100円という価格設定は異例でしたが、『色が変化する』『膨らむ』『自分でつくる』といった“楽しむ要素”を盛り込んだお菓子は非常に珍しく、そういう意味ではほとんど競合がいない独壇場だったと思います」と、マーケティング室の宮迫雅係長はヒットの要因を語る。

 しかし、喜びも束の間、ねるねるねるねの売り上げはすぐに伸び悩む。2000年半ばに差し掛かると売り上げの減少はさらに加速し、10年には販売個数がピーク時の半分にまで落ち込んだ。

 宮迫係長は、消費者の食品に対する意識が変化し健康志向が高まったことで、ねるねるねるねの“売り”だった「色が変わる」「膨らむ」といった不思議さや怪しさが裏目に出るようになってしまったと説明する。

 アンケート調査の結果でも「よく分からない怪しいお菓子を子どもに食べさせたくない」と考える保護者が増えていることが判明。「なんとなく体に悪そう」という印象が付いていたねるねるねるねは、気付けば敬遠されるようになってしまっていた。

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