初の200万人動員 横浜DeNAベイスターズを地域に根付かせた仕掛け勝っても負けても満足(1/4 ページ)

» 2019年02月20日 07時00分 公開
[加納由希絵ITmedia]

平成のV字回復劇場:

 戦略ミス?競合の躍進?景気のせい? どうして赤字になってしまったのか。どうして顧客は離れていってしまったのか。そして、どのようにして再び這い上がったのか。本特集では紆余曲折を経験した企業や自治体などの道のりを詳しく紹介する。

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 横浜DeNAベイスターズの人気が沸騰している。2018年のチーム成績は4位と、3年ぶりのBクラスに沈んだが、ビジネス面では右肩上がりの成長を遂げている。

 18年シーズンは、球団史上初の観客動員数200万人を突破。DeNAが親会社になる前の11年シーズンと比べると1.8倍に増えた。ファンクラブ会員数は9万人を超え、11年の14倍以上に急伸している。

 振り返れば、日本一になった1998年以降、チーム成績も観客数も低迷していた。そこからファンを増やし、事業を成長させた横浜DeNAベイスターズは、今ではスポーツビジネスの世界で一目置かれる存在になっている。

 なぜベイスターズのビジネスは成長したのか。その背景には、「勝っても負けても満足できる」体験を提供する仕掛けがちりばめられていた。

photo 横浜DeNAベイスターズは2018年、初の観客動員200万人を達成。どのようにビジネスを成長させたのか

膨れ上がった赤字、5年で黒字化

photo 横浜DeNAベイスターズ 事業本部 経営・IT戦略部部長の林裕幸氏

 「チームさえ勝てばお客さまが来てくれる、スポンサーが付いてくれる。そういうわけではありません」。そう話すのは、事業本部 経営・IT戦略部部長の林裕幸氏。DeNAが経営に入ったばかりのころは、まだ“チーム成績ありき”の考え方だったという。

 昔は球団を持つのは親会社の宣伝が目的という考え方が残っており、単体として利益を出す発想が乏しかった。そのため、「球団としての目標が明確ではなかった」。「チームが強くなればビジネスも上向く」と信じる一方向の関係性が続いていた。

 「今はそうではありません。ビジネスを頑張れば、そこで得た利益を選手や施設に対する投資に回せます。そうすれば、チームも強くなる。“両輪”で良い循環を生み出していくことを意識しています」

 11年までは、毎年のように多額の赤字が膨れ上がっていた。そこから「数年で黒字化」することを目標に改革に取り組み、16年に黒字化を達成。それでも5年かかったのは、その方法が単なるコストカットではなかったからだ。売り上げを伸ばすための費用は積極的に使って、「ベイスターズは変わった」と思ってもらうことを重視した。

 売り上げを増やすために、どのようなことに取り組んだのか。

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