初の200万人動員 横浜DeNAベイスターズを地域に根付かせた仕掛け勝っても負けても満足(4/4 ページ)

» 2019年02月20日 07時00分 公開
[加納由希絵ITmedia]
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勝っても負けても「楽しい」「うれしい」体験を

 ベイスターズの取り組みから分かるのは「野球が好きな人の方だけを見ていない」ということだ。野球にそこまで詳しくなくても、球場に来れば楽しいこと、うれしいことがある。「居酒屋感覚、イベント感覚で体験してもらって、次もまた身近な人と一緒に来てもらう」のが理想だ。

 「スポーツには勝ち負けがあります。そこに依存すると、負けたときに満足感が得られず、足が遠のいてしまいます。食べ物やイベント、グッズなどを楽しみながら、野球も楽しんでもらう。勝っても負けても同じような体験ができることを目指しています」

 だが一方で、チーム側は厳しい勝負の世界に身を置いている。選手や監督などには、キャンプインのタイミングや試合前など、折に触れて球団の経営状況を説明し、イベントなどの取り組みについて理解してもらっているという。「球場がガラガラよりもお客さまがたくさん来て応援してくれる方がいい、それが力に変わる、と考えてくれる選手が多い。OBの中には『(現在のチームが)うらやましい』と話す方もいます」

 18年には、試合終了後、球場に隣接するホテルのライブビューイング会場に活躍した選手が登場し、目の前でヒーローインタビューを行うイベントを開催。選手に協力してもらった。「選手にとっては8月の大事な時期でしたが、試合前に全員の前でライブビューイングについて話した結果、快く協力してもらえました」。コミュニケーションをしっかりと取ることで、チームと事業の“両輪”がうまく回っていくのだ。

photo 選手もファンサービスについて理解している

 「かつては『スポーツで金を稼ぐことは良くない』というイメージがありましたが、お客さまに満足していただけるサービスを提供して、対価をいただくことは必要です。またそれだけではなく、横浜スタジアムのにぎわいを街にも広げていくことが大切なのです」と林氏は強調する。

 今後も、ベイスターズのカラーを街にじわじわと浸透させていく。「まだまだ『横浜といえばベイスターズ』と言ってもらえるまでになっていません。地元の人にとって、もっともっと身近に感じてもらえるようになりたいですね」

 球団創設70年の節目を迎えた19年。球団とチーム、そして地域が一体となり、さらなる飛躍を目指すシーズンとなりそうだ。

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