初の200万人動員 横浜DeNAベイスターズを地域に根付かせた仕掛け勝っても負けても満足(2/4 ページ)

» 2019年02月20日 07時00分 公開
[加納由希絵ITmedia]

観客動員が成長のドライバー

 何より重視したのは、球場に来てもらうこと。「観客動員が成長のドライバー。お客さまに入ってもらうことが重要です。そうすれば、スポンサーにとっての価値も上がる。さまざまな面で相乗効果が見込めます」

 そこで、効果的な集客施策を行うため、観客のターゲット層を明確にした。それが「アクティブサラリーマン」だ。20〜30代の働く男性で、余暇の過ごし方としてアウトドアやイベントに出掛けることを好む人たち。このアクティブサラリーマンを中心として、その周辺にいる人たち(家族など)も含めたアプローチを強化したのだ。

photo 「球場に来てもらう」ための施策を重要視した

 まず、球場で快適に過ごしてもらうために、ハード面を改善。トイレやスクリーンを新しくしたほか、多様なニーズに合う座席を用意した。15年に新設した「リビングBOXシート」はその一つ。このシートを購入すると、クッション性のある床とソファ席を備えた空間を丸ごと使えるため、子どもが寝転がっても問題ない。また、スタジアム最上段に設置した「スカイバーカウンター」は10リットルのビールサーバ付き。ビールを飲みながらゆったりと観戦できる。

 現在は、横浜スタジアムの増築・改修工事にも着手している。20年シーズンまでに約6000席を増設する計画だ。

 球場内のイベントやサービスも強化した。女性限定でユニホームが付いてくるイベント「YOKOHAMA GIRLS☆FESTIVAL」や、選手が着用するデザインと同じ限定ユニホーム付きで、選手と観客が一体となって盛り上がる夏の一大イベント「YOKOHAMA STAR☆NIGHT」などの催しをはじめ、球場で楽しんでもらう取り組みを重ねている。

photo 女性に楽しんでもらうイベント「YOKOHAMA GIRLS☆FESTIVAL」を開催

 目指すのは、横浜スタジアムを中心とした「コミュニティボールパーク」。女性や子ども向けのサービスも、単純にそのサービスの対象者となる層を増やすことだけが目的ではない。アクティブサラリーマンが「家族や友人、同僚など、どんな人と一緒に来ても楽しめる」ことを意識している。彼らが形成しているコミュニティーを丸ごと取り込むことを狙っているのだ。

 だが、最初から全ての試みがうまくいったわけではない。初期のころは、失敗も多かったという。

 「例えば『負けたら返金』チケットがありました。満足できなかったらチケット料金を返金するというサービスでしたが、チームが勝っても返金を求める人などもいて、基準が曖昧でうまくいきませんでした」。また、球場内にシャボン玉を飛ばす催しも失敗の一つ。口に入っても害がない材料を使っていたが、やはり飲み物にシャボン玉が入ると気分が良くない、という声があり、続かなかった。

 このような失敗も経験しながら、取り組みの成功率を上げていった。

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