私が麹町中学校の校長に赴任した当時、宿題のあまりの多さに驚きました。ただし、これは多くの中学校でも同じです。生徒たちは宿題をこなすことに汲々(きゅうきゅう)としていて、かわいそうなほどでした。かねて宿題の存在意義に疑問を持っていた私は、赴任2年目に、まず、夏休みの宿題をゼロにする方針を打ち出しました。
その後、段階的に宿題をなくしていき、4年目を迎える頃に「全廃」に踏み切りました。
当初、私が宿題全廃の方針を示したことに、一部には疑問を持ち、抵抗感を示す教員もいました。当然のことだと思います。
私はこう説明しました。
「批判や誤解を恐れずに言えば、教員が宿題を出すのは子どもたちの『関心・意欲・態度』を測り、評価(通知表)の資料とするためではないですか。もっと私たちは専門性を発揮しないといけない」と。
この問題の背景には、一つの流れがあります。学校関係者以外には、あまり知られていないかもしれませんが、そもそも「評価」が、かつての相対評価から絶対評価へと変わっており、その中で、「関心・意欲・態度」という観点別評価を行うようになっています。
通知表には、学習の理解度・到達度だけでなく、学習に対する「関心・意欲・態度」が示されています。この「関心・意欲・態度」は、目に見えない尺度だけに、評価するのが難しいものです。そのため、宿題の提出量や、授業中の挙手回数などをカウントし、それを評価に活用していることは珍しくありません。
本来であれば、そうした数字に頼らず、子どもの成長や可能性を読み取るのが、専門職たる教員の役割です。
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