最初に疑うのはクルマが売れてないということだろう。確認してみる。
19年3月度の決算資料から販売台数状況
グローバル販売台数は163.1万台から156.1万台で4%(6.9万台)のダウン。確かに売れていない。地域別に見るとどうなのか?
- 日本 21万台 → 21.5万台の2%(0.4万台)プラス
- 北米 43.5万台 → 42.1万台の3%(1.4万台)マイナス
- 欧州 26.9万台 → 27.0万台の0.3%(0.1万台)プラス
- 中国 32.2万台 → 24.7万台の23%(7.5万台)マイナス
- その他市場 39.4万台 → 40.9万台の4%(1.4万台)のプラス
となり、北米と中国という2つの巨大マーケットでの負け越しが大きい。
問題はそのマイナスの原因だ。一時的な理由なのか、それとも深い構造的原因があるのか? マツダ自身の説明によれば、その理由を「販売費用増、OEM供給減、中国向けノックダウン出荷減」の3つにまとめている。OEM供給減とノックダウン減に関しては、長期的に見れば他社との関係の中でそういう時期もある。
先日のニューヨークモーターショーでは、北米向けのヤリス(日本名ヴィッツ)がトヨタからデビューしたが、これはマツダのデミオのOEMだ。少なくともトヨタ製の新型ヴィッツがデビューするまでの2年間、デミオが「トヨタ・ヴィッツ」として北米で販売される。これによって自動的に次期決算ではOEM供給はプラスになるはずだし、2年後にはそれがなくなってまたマイナス圧力がかかるだろう。
マツダからデミオのOEM供給を受けて、トヨタがデビューさせた北米ヤリス
23%と下落幅が最も大きい中国に関していえば、ノックダウンだけの影響とはいえまい。中国市場の減速感は極めて強く、失速はマツダだけではない。ただ、全自動車メーカーが同じなのかといえばそうではなく、同じ条件下でもマツダのダウンはやはり大きい部類に入るだろう。日本でプラスになっているマツダの魅力が中国では訴求できていない。それはおそらく北米も同じだ。
それをひも解くキーワードが「販売費用」だろう。販売費用にはいろいろあるが、決算書でこの言葉が出てくる場合、それは多くのケースで販売店への販売奨励金(インセンティブ)である。
- Mazda3に見るマツダの第7世代戦略
北海道上川郡剣淵町のテストコースで開催されたマツダの雪上試乗会にMazda3が用意された。筆者はすでに北米での試乗会で運転して、十分以上に驚いた後なのだが、さらにもう一度驚かされた。
- マツダの新型アクセラ、失敗できない世界戦略
新型Mazda3(アクセラ)はいわゆるCセグメント。フォルクスワーゲン・ゴルフをベンチマークとする小型車で、トヨタ・プリウス、カローラなど世界最激戦区で戦うモデルだ。マツダにとって失敗が許されないモデルであり、成功すればマツダのイメージを大躍進させる重要な位置付だ。
- 明らかにされたマツダのEV計画
ここ数年マツダは内燃機関の重要性を訴えており、SKYACTIV-Xを筆頭とする技術革新を進めてきた。中にはそれをして「マツダはEVに否定的」と捉える層もあるが、実はそうではない。EVの必要性や、今後EVが増えていくということを、マツダは一切否定をしていないのだ。
- 驚愕の連続 マツダよそれは本当か!
マツダが2030年に向けた技術開発の長期ビジョン「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言 2030」を発表。この中で、最も注目されたのは「内燃機関の革新」の中核となるSKYACTIV Xだ。かねてよりマツダが研究中と伝えられてきたHCCIエンジンがいよいよそのベールを脱いだことになる。
- 悪夢の「マツダ地獄」を止めた第6世代戦略
一度マツダ車を買うと、数年後に買い換えようとしたとき、下取り価格が安く、無理して高く下取りしてくれるマツダでしか買い換えられなくなる。その「マツダ地獄」をマツダ自身が今打ち壊そうとしているのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.