#SHIFT

「平成の名経営書」は? ビジネススクール教員が選ぶ「決定版5冊」週末に読むべきビジネス書(1/3 ページ)

» 2019年05月18日 05時00分 公開
GLOBIS知見録
※本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 令和の時代が始まりました。ビジネス環境もこれまでとは大きく変わっていくことでしょう。そこで今回は、新しい時代においても役に立つ、後世に残るような理論やコンセプトを提唱した平成の名経営書を、グロービス経営大学院教員がご紹介します。

phot 多くの名著から選ぶ「これだけは読むべき」という経営書は何か?(写真提供:ゲッティイメージズ)

頂点に立った瞬間、次のゲームで負ける。だからこそビジネスは面白い

(1)『イノベーションのジレンマ』推薦:荒木博行

 平成の期間に多くの経営書が世の中に出ました。その多くは、効用期間が1〜3年程度で終わってしまうものでしたが、中には「人間がビジネスをしている限り永遠に」という時代を超えて使えるお化け書籍もありました。その代表格が本書です。

 この書籍の内容をシンプルに言えば、「既存のルールで勝ち抜いたチャンピオンは、新しいルールでは勝つことができない。なぜならば、既存のルールと新しいルールで求められる能力が大きく異なるからだ」ということ。みんな「頂点に立ちたい」と思って頑張るけど、このセオリーに従うならば、「頂点に立った瞬間に次のゲームでの敗退が決まる」ということでもあります。

 この「勝ったら負け」というのが、このタイトルにもある「ジレンマ」の本質なのです。もちろん、「うちは例外。このルールでも勝って、次のルールでも勝つ!」と言って頑張るものの、やっぱり高い確率で負けてしまいます。この本にはその「例外的だと思って頑張って敗れ去っていった企業の姿」がしっかり描かれています。ビジネスって難しい。でもだからこそ楽しい。そう感じさせる平成の名著です。

世界に影響を与えた日本的経営のコンセプトを知る

(2)『経営戦略の論理』 推薦:金子浩明

 本書は1980年に米国で「Mobilizing Invisible Assets」として出版され、世界の経営理論に影響を与えました。そのユニークな点は、企業が成長・発展していく上で、情報的経営資源(見えざる資産=Invisible Assets)を重視したことです。

 見えざる資産とは、技術やノウハウなどの知識資産、デザインやブランド力、これらを活用する組織体制などを指します。これらは企業特殊的な経営資源であり、市場で外部から調達することが難しい。伊丹氏は、戦後の日本から世界を代表する企業が続々と誕生できたのは、「オーバーエクステンション」(自社の能力を超えたチャレンジ)戦略によって従業員が学習し、内部に独自の「見えざる資産」を蓄積してきたからだと論じました。

 そこには、経営資源を市場から調達しやすい米国企業とは異なる経営の姿がありました。伊丹の理論は資源重視・学習重視の戦略論の先駆であり、今や古典的な位置付けとなっています。しかし、その理論は現代でも全く色あせていません。出版から30年以上たっていますが、内容は改定(第4版)を通じて進化しており、扱っている事例も刷新されています。まさに、令和時代も読み続けたい1冊。

       1|2|3 次のページへ

©GLOBIS All Rights Reserved.