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「退職予定者をいじめる」会社には重いツケが回ってくる、意外な理由辞める同僚につらく当たっていませんか?(2/4 ページ)

» 2019年05月20日 07時05分 公開
[服部良祐ITmedia]

口コミサイトに悪評、採用に支障も

 山本さんの在籍時、この会社では数年間にわたり似たような退職トラブルが頻発していた。同時に、インターネット上では会社のネガティブな風評が出回るように。転職希望者向けのサイトや業界のユーザー向け口コミサイトで、社内事情に通じた元従業員の物と思われる悪口の書き込みが増加した。それらを見てしまった入社希望者が採用面接を辞退するケースも発生。取引先の業者間でも会社の悪評がささやかれるようになり、頼んだ仕事を断られる事態にまで発展した。

 山本さんは「こうした悲しい転職は以前もあったのだろうが、今はSNSなどに書き込んで発信できる場が増えたため転職者たちが泣き寝入りしなくなったのだろう」とみる。その後、この会社では社員の退職手続きについて現場に任せずにできるだけ人事担当者が間に入り、聞き取り調査にも取り組むようになった。「人事が社員の退職手続きに関与していくことで、上司も過激な言動を取りづらくなっているようだ」(山本さん)。

 辞める側だけでなく、辞められた会社側も最終的には事業や採用活動に悪影響をもたらしかねない、こうした退職時のトラブル。転職予定者向けの「退職代行サービス」などが話題になる一方で、そもそもの原因である会社側の「トラブルに陥るような辞めさせ方」を改善しようという動きも始まっている。

「気持ちよく辞めてもらえるコツ」を企業に指導

 17年創業の人材系ベンチャー、ハッカズーク(東京都新宿区)では、顧客企業に「退職を表明した社員に気持ちよく辞めてもらえるコツ」をアドバイスしている。

 同社の主な事業は、企業を退職したOB・OG(アルムナイ)と、古巣の企業とをweb上のネットワークで同窓会のようにつなぐサービスだ。顧客企業は、ネットワークを通じて元従業員に今度はユーザーになってもらったり、業務の委託や再雇用に結び付けたりもしている。

。現在、顧客企業は大小約10社で、登録した「アルムナイ」は千数百名に上る。以前に在籍していた企業の業務内容や商品を熟知している彼らに、優良な顧客や業務上のパートナーになってもらえるメリットがあるという。

 ただ、社長の鈴木仁志さんによると、サービス初期はこのアルムナイたちが古巣の職場となかなかつながりたがらず、苦戦したという。ネットワークには登録してくれるが、古巣の会社からの情報発信に対して、返答などアクションを取ろうとしないのだ。

 鈴木さんたちが顧客企業などのOB・OG約300人と、辞められた企業側の社員約200人にヒアリングしたところ、浮かび上がったのは「アルムナイ」たちが元いた会社に意外なほどネガティブな印象を抱いているという結果だった。

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