鈴木さんによると、退職者が必ずしもずっと前から会社に不満をためて退職したケースばかりではない。むしろ在職時は職場との関係が良好だったのに、退職表明後に急激にネガティブな感情を持つようになった場合が目立つという。
例えばよくあるのが「退職を会社に告げた途端、その人への上司や役員の態度が厳しくなる」場合だ。他の社員に上司が「退職予定者は飲み会に誘うな」「退職日に花を渡してはならない」「これから辞める奴と話すな」などと指示していたケースもあったという。社内SNSから外されるなど、業務に支障が出そうな仕打ちを受けたと告白したアルムナイも。「辞めるヤツはこうなる、ということを(残される他の社員に上司が)示したかったのかもしれない」(鈴木さん)。
鈴木さんは「日本企業は終身雇用が前提だったので、(中途で社員に辞められると)会社側は『新卒で採用した人材への投資が回収できていない』と考える。感情に任せて最悪の結果になってしまう」とみる。
また、会社側がひどい仕打ちをしたというよりは、退職予定者がほんのささいな退職時の職場の対応に傷つき、急に古巣への印象を悪化させてしまうというケースも頻出した。「(退職時に)渡された花束が他の人の時より小さかった」「エレベーターまで職場の仲間たちが見送ってくれなかった」など、第三者にはそこまで深刻に見えない退職時の違和感を、意外とため込んでしまっている人も少なくなかったという。
こうして元いた会社への不満や恨みを持ったまま社員が退職した結果、冒頭の山本さんの目撃例のように、企業の事業や採用活動に悪影響を与えるケースも珍しくないという。鈴木さんによると、元従業員が転職口コミサイトにネガティブな情報を書き込んだり、SNS上で元従業員同士による「悪口大会」が開かれることも。メディアに報道されるレベルの内部告発や情報漏えいにつながるリスクも十分考えられるという。
「以前いた会社に既にネガティブな印象を持っているアルムナイ(同窓生)を、ポジティブに変えるのは非常に大変。『働き方改革は働かせ方改革だ』とよく言われるように、企業側も『辞めてもらい方』を改善すべきだ」と鈴木さんは断言する。
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