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日本型雇用は“幻想”に過ぎない トヨタ・経団連トップの「終身雇用難しい」発言で露呈 “いま”が分かるビジネス塾(3/3 ページ)

» 2019年05月22日 07時00分 公開
[加谷珪一ITmedia]
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日本型雇用は「そもそも存在していなかった」

 企業は定年延長に大きな危機感を抱いており、一定以上の年齢に達した段階で主要ポストに就いていない社員を管理職から外す、いわゆる役職定年の強化に乗り出している。定年後の再雇用においても、給料を大幅に下げるケースが続出している。

 定年後、同じ会社に雇用されたとしても、場合によってはグループ内の派遣会社の社員となり、まったく別の会社に派遣されるという可能性もゼロではないのだ。そうなってくると、書類上は同じ会社に勤務しているものの、事実上、転職していることと同じになる。

 このシステムは本質的に意味がなく、早晩、維持が難しくなるだろう。結果的に中高年の転職市場が拡大することで終身雇用制度が崩壊していく可能性が高い。終身雇用制度がなくなれば、年功序列の人事システムも機能しない可能性が高く、新卒一括採用の見直しも進むだろう。結果的に賃金も同一労働、同一賃金に収束することになり、正社員と非正規社員の格差も縮小に向かって動き出す。

 長い時間がかかったが、結局のところ、日本企業の雇用も、諸外国と同じ制度になるだけの話であり、日本型雇用など、そもそも存在していなかったと考えた方が自然である。

加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)

 仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。

 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。

 著書に「AI時代に生き残る企業、淘汰される企業」(宝島社)、「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。


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