不思議なことに、会議のやり方は誰も教えてくれない。多くのビジネスマンは、誰からもキチンと教わった記憶がないだろう。摩訶不思議な現象なのだが、捉え方を変えれば、「キチンと会議の仕方を学べば、劇的に改善する可能性がある」ともいえる。
世にある会議の本は、正しいことを書いてあるものの、内容が高度すぎるものが多い。「会議では図解しろ」などと書いてあるが、「図解」なんて、プロでも難しい。スケートの初心者にいきなりトリプルアクセルを教えるようなものだ。「正しい靴(スケート靴)の履き方」こそが、最初に教えることであるべきなのだ。
では、会議にとっての「正しい靴の履き方」と何だろうか?
当連載では、私の著書である『世界で一番やさしい会議の教科書』および『世界で一番やさしい会議の教科書 実践編』から、そのエッセンスを紹介する。
会議は「4つのフェーズ」に分けられる。「準備」「導入」「進行」「まとめ」だ。それぞれの役割は以下の通りだ。
準備(Prep): 文字通り、事前に「会議の準備」をするフェーズである。そういうと、会議室の手配や資料の準備、参加者への事前連絡などを思い浮かべるが、これらは準備のごく一部にすぎない。「事前準備の質が会議の質を決める」といっても過言ではないくらい、準備は大切だ。ところが、会議の進め方を考えるような本質的な準備は、ほとんど実施されていないのが現状である。
導入(Kickoff): 狙いは、「参加者を議論のスタート地点に立たせる」こと。いきなり議論に入る会議をよく見かけるが、導入がおろそかになると、参加者がすぐに“迷子”になる。会議に出たはいいが、「何をすればいいのか分からない」という状態になった経験はないだろうか。これから何をするのか、何のために議論をするのか、どのくらい時間をかけるのかを最初に全員で共有する。
進行(Conduct): この狙いは、「議論をスムーズに進め、会議のゴールを達成する」ことだ。参加者が好き勝手に発言していると、議論が混沌としてくる。そうなると、交通整理が必要だ。議論が全く盛り上がらないこともある。誰も発言しない、意見が出ない会議がその典型だろう。そうなると、意見を引き出す工夫が必要になる。
まとめ(Conclude): ここでの狙いは、「これまでの議論をムダにしない」こと。最後に議論を振り返り、「決まったこと、やるべきこと、次回に議論することを確認」する。
会議は、ざっくりと上記の4フェーズで成り立っている。そもそも、会議が「4つの段階で成り立っている」なんて考えたこともなかった人もいるだろう。何となく時間になると集まって、何となく議論して、何となく解散する。それではダメだ。
さらに、それぞれのフェーズには、基本としてやるべきことがある。それらは全部で「8つの動作」に分類できる。
会議のフェーズごとに、必要なファシリテーションの基本動作は異なる。「8つの基本動作」の全体像はこんな感じだ。本当はもっと無数のスキルを総動員するものだが、基礎となるのは、この8つである。
番号の若い方が、難易度が低く、実施しやすいものだ。難しいことから始めずに、1から確実に実施することをお勧めする。当連載では、次回から、「8つの基本動作」の詳細を順に解説していく。
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