インタビュー
» 2019年05月23日 05時15分 公開

令和時代の「インパール作戦」か?:激増する“ワンオペ管理職” 「かりそめの働き方改革」が日本をダメにする (4/5)

[田中圭太郎,ITmedia]

ブラックな働き方も役に立った?

――政府が進める働き方改革は、残業をせずに、自分の時間を作ってワークライフバランスを取ることを推奨しているようにも見えます。それでは生産性は上がらないと思うのですが。

 ワークライフバランスを優先する考え方は、昔はなかったですよね。空いた時間は仕事のために勉強しろと言われていました。私も社会人になって5年くらいの頃は、会社を早く退社して遊んだ時には、まわりからバカにされていました。だから必死に勉強していましたね。

 自分のミッションがあるのなら、自分の時間は仕事のために使うべきです。家族との団らんには余暇を使えばいいのです。何か美しい価値観を植え付けられている気がして、そこに強い違和感があります。

――残業をしないことの目的が、すり替わっているということですか。

 幸か不幸か分かりませんが、いまの40代や50代は、非常に景気がいい時期に、長時間労働や休日出勤など、ブラックな働き方をする中で将来をつかんでいました。語弊があるかもしれませんが、ブラックな働き方の中にも結構役に立つものがあったのです。

 全部がそうとは言いませんが、定時に帰ることが自己目的化されてしまうと、仕事の中で役に立つものまで失われてしまうこともあるのではないでしょうか。働き方とは何なのかを、もう少し深く考えた方がいいと思います。

日本のあちこちで起きている「インパール作戦」

――お話を伺っていると、日本では企業も、国の政策も、方向性を間違えたまま前に進んでいると感じます。

 会社で業務を進める中で、組織やチームで設定した目標を達成するための過程を、中間指標であるKPIで計測しますよね。このKPIが業績と連動しているかを分析する必要があります。間違っていた場合は、検証して、誤りを認めなければいけません。それをせずに誤ったまま走っていくことを、私は「インパール作戦」と呼んでいます。

――旧日本軍のインパール作戦ですか。

 インパール作戦の悲劇は、たくさんの人が無謀な戦闘を強いられたことではありません。間違った作戦が立てられて、いくつも失敗が起きているのにもかかわらず、最初の作戦を続けたことでたくさんの犠牲者が出たことです。

 これを会社に置き換えると、設定されたルールが間違いだと誰の目にも明らかなのに、1回決めたことだからと中間管理職が無理矢理守ろうとしている状態です。

 いま、日本のあちこちでインパール作戦が行われています。成果主義や働き方改革もそうですし、日本銀行の異次元緩和もそうです。2012年以降の財政検証では、実質賃金の低下は異例のことだといって金融政策を正当化していますが、実際、実質賃金は下がり続けています。それなのに全く省みられていません。間違いなく将来に禍根を残しています。 

 消費税を上げなくても財政は大丈夫とか、財政赤字は関係ないという人たちには、あなたは責任をとれるんですかと言いたいですね。いやしくも政策を語る人たちは、失敗を認めないといけない。責任の所在をはっきりさせて信賞必罰でなければ、高い報酬を受け取るのはアンフェアだと言われるでしょう。

「働き方改革」より生産性の上昇を

――給料が上がらないなかで、成果主義やワンオペ仕事を強いられても、モチベーションも生産性も上がらないと思いますが。

 高杉晋作の辞世の句に、「おもしろき こともなき世を おもしろく」という言葉があります。仕事はまさにそうで、本来は面白くも何ともない仕事を、いかに面白くしていくかが大事になってきます。

 おそらく給料のためだけに働いても面白くないでしょう。お客さまのために尽くして、喜んでもらって、成果を得ることが、会社の本来のミッションです。そのミッションの達成を目指して、一緒に働く人たちに利他的な思いで接することで、みんなで頑張ろうという雰囲気が生まれます。組織のパワーを最大化することが、生産性の上昇につながるのです。

 繰り返しになりますが、本当に大切なのは働き方改革ではなく、生産性の上昇です。ワンオペ管理職を放置するのではなく、生産性を上げるために組織として何をすればいいのかを、いま一度整理するべきではないでしょうか。

phot 本当に大切なのは働き方改革ではなく、生産性の上昇だ

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