インタビュー
» 2019年05月23日 05時15分 公開

令和時代の「インパール作戦」か?:激増する“ワンオペ管理職” 「かりそめの働き方改革」が日本をダメにする (3/5)

[田中圭太郎,ITmedia]

投資をしなければ成長はない

――企業が以前からの経費節減をほとんど見直さずに、生産性の上昇を声高に叫ぶことを、著書でも批判されていますね。

 問題が根深いのは、経費節減がたぶん生産性向上につながるだろうという間違った解釈に基づいていることです。インプットを減らすと、見かけ上は少ないインプットでアウトプットを生み出しているように見えます。しかし、これは完全に間違っています。

 インプットを減らすと、アウトプットは減ります。なぜかというと、日本の企業は伝統的に無駄なことをしていないからです。単純な算式から、生産性が上がっているかのような錯覚を生んでいるだけです。

――生産性を上げるためには、何が必要になってくるのでしょうか。

 本当に必要なのは投資です。投資をしないと、将来の成果は絶対に増えません。

 卑近な例で言いますと、4月1日に「令和」が新しい元号に決まりました。私は新元号が決まったらエコノミストとしてすぐにレポートを書こうと思って、どう料理しようかと3月上旬から考え続けてきました。これは投資です。準備していなければアイデアも生まれませんし、レポートは書けないでしょう。

 実際に「令和」に決まってから、Tシャツなどの商品を発売したり、改元に合わせたキャンペーンを発表したりする企業がたくさん出てきました。発表後にすぐ調べただけでも600社くらいありました。これらの企業は4月1日以前に「投資」していたわけです。

 優秀な経営者は、投資を増やすからアウトプットも増えることを百も承知です。しかし、現場で生産性上昇をはかる立場にある中間管理職が、節約すればアウトプットが増えると思い込んでいるのです。

「働き方改革」はかりそめの改革

――4月から働き方改革関連法の施行が順次始まりました。政府は、働き方改革によって生産性を高めると主張しています。働き方改革は、日本の生産性上昇の切り札になるのでしょうか。 

 いま働き方改革と言われているものは、“かりそめの改革“です。おそらく生産性の上昇とは、かけ離れていると思います。

――“かりそめの改革“だと思われるのはなぜですか。

 経済学者たちが考えていた働き方改革の最初の構想は、パート・アルバイト・派遣といった非正規で働く人たちと正社員の間に、中間的な雇用形態を作って、非正規の人たちのポテンシャルを高めようというものでした。

 それが、15年に大手広告会社で働く当時24歳の女性が過労により自死したことを受け、残業時間の上限を月45時間にして、違反した企業には罰則を課すことになりました。今年4月から大企業は有給休暇を5日以上取得させることが義務付けられました。中小企業でも来年4月から義務付けられます。

 でもこれは、単なる労働規制の強化ですよね。労働規制の強化を、働き方改革の名前で呼んでいるだけなのです。それが、いつのまにか働き方を変えれば生産性が上がるという怪しい話になってしまっています。

 企業は先行きが不安なので、これから先も賃金のベースが大きく上がることはないでしょう。正直に話してくれる中小企業の経営者は、残業規制をすれば残業代が軽くなるので利益が増えて、特に大企業はまた金あまりになるのでは、と冷ややかなことを言っています。

phot “かりそめの改革“が日本をダメにする

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