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“絶体絶命”のファーウェイ、「伝説の創業者」のDNAに見る“それでも強気な理由”【後編】いかにして「苦境」を乗り越えてきたか(4/5 ページ)

» 2019年05月30日 05時00分 公開
[高口康太ITmedia]
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ファーウェイの冬

 飛ぶ鳥を落とす勢いで成長するファーウェイだったが、任正非は常に慎重な姿勢を崩さなかった。悲観的と言ってもいいかもしれない。01年、彼は社内誌に「ファーウェイの冬」なる文章を掲載している。

 創業以来、私は毎日失敗についてばかり考えてきた。成功は見ても見なかったことにし、栄誉や誇りも感じず、むしろ危機感ばかりを抱いてきた。だからこそ、ファーウェイは10年間も生存できたのかもしれない。そして、どうすれば生き残れるかを皆で一緒に考えれば、もう少し長く生き延びることができるかも。

 失敗という“その日”は、いつか必ずやってくる。私たちはそれを迎える心の準備をしなければならない。これは私の揺るぎない見方であり、歴史の必定でもあるのだ。

(田濤、呉春波『最強の未公開企業ファーウェイ冬は必ずやってくる』東洋経済新報社、2015年、213ページ)

 会社が傾いた時の言葉ならばともかく、ドットコムバブル全盛時代に書かれたとは思えない内容だ。果たして任の予見通り、通信業界には厳しい冬が到来した。ファーウェイの経営も悪化し、モトローラに身売りする寸前だった。モトローラ側の事情で買収話は立ち消えとなると、ファーウェイは自力で苦境を乗り越えたのだった。

 通信機器は変化が激しい業界だ。世界を席巻していたモトローラが解体され売却されたように、多くの世界的企業が沈没していった。その中で生き残ったのは、「治に居て乱を忘れず」を地でいく任正非のファーウェイだった。

 大型交換機の失敗、ドットコムバブル崩壊という二度の危機を乗り越えたファーウェイだが、果たして3度目にして最大の危機とも言える米国の制裁を耐えきることはできるのだろうか。

 ファーウェイはこの危機を予測し対策を整えていたというが、世界経済がこれほど密接なつながりを持っている現代において、他国企業との協力関係を欠いて生き残れるとは思えない。恐らく任正非もファーウェイがボロボロになるまで追い込まれることは覚悟している。

photo ファーウェイ・キャンパスにあるショールームより。顔認識技術を使った治安システムの紹介。2018年4月、筆者撮影

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