米国に次ぐ世界第二の経済体となった中国。図体の大きさだけではなく、画期的なイノベーションを生み出すなど、創造力の面でも今や世界をリードする存在だ。10年前は「遅れた途上国」だった中国が、なぜ瞬く間に「S級国家」へと変貌したのか。長年中国と関わり続けている気鋭の論者に、社会、政治、技術の各方面から分析してもらった。
中国、すなわち中華人民共和国は、1949年の建国以来、中国共産党が一党独裁で支配する社会主義国である。いちおう共産党以外にも衛星党と呼ばれる8つの政党があるが、お飾りにすぎない。なにせ憲法(中華人民共和国憲法)に「中国共産党による領導(指導)は中国の特色ある社会主義におけるもっとも本質的な特徴である」と明記されている。独裁をやめるには、憲法を変えなければならないのだ。
中国共産党による支配は、国の上層部から社会の基層にまで張り巡らされている。どういうことかというと、省庁などの国の機関、さらには企業、学校、あるいは住宅地の住民委員会に至るまで、あらゆる組織は原則的には共産党委員会との二重体制になっている。日本にはない話なのでなかなか理解が難しいと思うので、北京を事例に紹介しよう。
市長といえば、日本ではその市でいちばん偉い人物になるわけだが、中国ではナンバー2でしかない。北京市には北京市政府のほかに中国共産党北京市委員会という組織がある。「党委(共産党委員会)」と呼ばれるその組織のトップは書記。北京市長および北京市政府が行政を担当し、書記と党委がその北京市政府を指導するという関係だ。
政策を決定するのは書記と党委であり、実行するのが市長と市政府。共産党の立場がつねに上なのだ。あらゆる自治体、国有企業、学校には党委が設置されている。民間企業には党組織がないところもあるが、最近では国が奨励していることもあって設置される事例が増えている。「民間企業といっても、結局共産党にコントロールされているじゃないか」と米国の不信を招いたゆえんだ。
省、市から県に至るまで、サイズは違えども党委と政府が存在する。党が現地政府を指導する。指導する側とされる側の関係はどこまでいっても変わらない。
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