HUBがビールを値上げしたのに、客数と売り上げを増やせたワケ災い転じて福となす(4/4 ページ)

» 2019年06月07日 05時00分 公開
[昆清徳ITmedia]
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フード改革の中身は?

 低価格のドリンクを増やすと、どうしても客単価は下がってしまう。客数を増やすことでマイナスを補うのが目標だが、料理を注文しやすくすれば、客単価が改善するのではないか――こう考えたHUBは、フード価格の見直しにも着手した。

 改革の柱は、500円以下のメニューが占める割合を、5割から8割に引き上げることだ。ただ、これまで提供していたメニューをサイズダウンして値下げするだけでは芸がない。そこで、仕入れ価格や原材料を見直すことで、価格を下げることにした。これらは「(飲食チェーンにとって)定石通りの手法」(担当者)だった。

 ドリンクとフードのメニュー改定は結果として成功した。「客単価減×客数増=売り上げ増加」という狙いが的中したからだ。

HUBにとっての追い風要因

 「ビールの値上げ」「ビール離れ」は、HUBに“うれしい誤算”をもたらしている。ビールの出数が減る一方で、カクテルの出数が増え、全体の利益率がアップしているというのだ。ビールに比べ、カクテルは原価率が低い。

 また、若者の酒離れが進めば進むほど、HUBにとっては追い風になる可能性があると担当者は見ている。一般的な居酒屋チェーンで行われる飲み会では、自分はウーロンハイを1杯飲んだだけなのに、お酒を多く飲んでいる友人と同じお金を支払わなければいけないケースもある。それでは納得できないということで、飲み会の誘いを断る若者は一定数いると考えられる。しかし、飲める人と飲めない人が共存しやすいHUBならば、飲み会の場として活用してもらいやすい。現時点でも、グループで店を利用する場合、自分の好きなタイミングで入店・退店しやすい使い勝手の良さがお客に支持されている。今後、「低価格で飲める」という認知が広がれば懐事情の寂しい若者が新規客になってくれるかもしれない。

 低価格化戦略が成功したHUBだが、同じように安さを売りにするチェーンはどんどん増えている。独自のビジネスモデルで、既存店をさらに成長させることができるのか。

photo 【価格改訂前】500円以下のメニュー数は5割にとどまる
photo 【価格改定後】500円以下のメニュー数が8割に増加
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