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見知らぬ客同士に会話させたら店員の評価UP!? 立ち飲みチェーンの狙いとはユニークな人事評価制度の全容とは(3/6 ページ)

» 2019年06月24日 05時00分 公開
[昆清徳ITmedia]

客とコミュニケーションをとる仕掛け

 筆者も平日の午後6時に焼きとん大黒蒲田店を訪ねてみた。店内には客が数人いたが、店員とカウンター越しに自然と会話を楽しんでいる姿が印象的だった。

 店舗には、客と店員が自然とコミュニケーションをとるための仕掛けがある。メニューはカウンターの下に入っており、“一見さん”は簡単に見つけられないようになっている。来店してからキョロキョロとメニューを探すしぐさをすると、新規客だと分かるので、店員は伝票に新規客を示す記号を書き込む。そして、「メニューはこちらですよ」と話しかける。会話が自然と発生するようにしているのだ。これは、同社内では「サービスストーリー」と呼ばれている。新規客、2回目以降の客だという情報は店内で共有し、接する方法も変えている。

 店員は常連客の情報を日々蓄積しているので、例えば新規客から「山形から出張で来たんだよ」と聞かされたら、「そういえば、あそこにいる●●さんは山形のご出身ですよ」と常連客とつなぐ。このようなバリエーションは豊富にあるという。

客に注文を聞いた回数を報告させる

 では、光フードサービスはこの取り組みをどのように人事評価につなげているのか。本記事では分かりやすく伝えるため、加点のことを「ポイント」と表記する。

 例えば、客が飲んでいるジョッキが空になったのを見つけ、「もし、2杯以上飲むならお得なメガジョッキがお勧めですよ」と声をかけるとポイントが得られる。そして、客から「じゃあ、メガジョッキを1杯」と注文してもらえればさらにポイントがつく。焼きとん大黒では「差し込みメニュー」という月ごとに替わる商品を提供している。店員が差し込みメニューの商品を客に勧め、注文された数に応じてポイントが得られる。冒頭にあったように、見知らぬ客同士が自然に会話するように仕向けることを同社では「トライアングル」と表現している。このトライアングルを発生させてもポイントがつく。

 こういったポイントが発生するたびに、従業員は伝票につけて管理する。1日ごとに集計し、その日の合計ポイントを店舗単位で報告させている。これは、店単位での一体感を高め、チーム力を向上させる狙いがある。大谷社長は「接する回数が増えると、自然と世間話をすることもありますよね。商品を軸としてコミュニケーションをとることを従業員に推奨しています」と説明する。

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