会社の数字〜注目企業を徹底分析〜

見知らぬ客同士に会話させたら店員の評価UP!? 立ち飲みチェーンの狙いとはユニークな人事評価制度の全容とは(4/6 ページ)

» 2019年06月24日 05時00分 公開
[昆清徳ITmedia]

社内SNSで管理

 その他の数値評価としては、覆面調査とスーパーバイザー(SV)やマネジャーによる臨店チェックがある。覆面調査の対象は「店員から追加注文の提案があったか」「●●の商品の提案があったか」など100項目程度に及ぶ。臨店チェックでも同様に、決められた項目に沿って店を点検し、評価している。

 現在、こういった数値目標は社内SNSで管理している。数値はリアルタイムに反映されるため、社員は自分の評価がどのように変動しているのかを強く意識できる。アルバイト店員は店長の評価を見ることはできない。閲覧するには職位に応じた権限がある。

不公平感をなくすのが目的

 もちろん、ビジネスをしている以上、売り上げや利益といった項目も大切だ。しかし、大谷社長はそういったことではなく、客とのコミュニケーションや日々コツコツこなす仕事の重要性に目を向けさせることが、現在の評価制度を導入している狙いだと説明する。

 社長の目線で考えると、どうしても高い売り上げや利益をたたき出す店長を高く評価したくなるのは自然な流れだ。しかし、それでは他の従業員が「あの社員は立地の良い店に配属されているからボーナスを多くもらえるんだ」といった不公平感を抱いてしまう。同じように接客し、注文を取り、店を清潔に保つように努力しているのに、報われないと感じてしまっては従業員のモチベーションは保たれない。「正しい努力を正しく評価する」(大谷社長)ことを目的に現在の評価制度が確立されたのだ。

 特に高い成果を出した社員は半年に1度、表彰されてボーナスにも反映される。この制度は特に20代の社員に好評なようだ。「今の若者は承認欲求が強いです。『人の役に立っている』『会社に求められている』という実感が求められています。また、不公平な扱いを受けているかどうかにも敏感ですね」と大谷社長は説明する。

 こういった施策のおかげで、社員が職場に定着するようになっている。一般的に飲食業界の離職率は20〜30%とされているが、同社の18年11月期における離職率は8%。19年11月期の離職率は現在のペースでいくと4%になる見通しだという。

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