「われわれは6気筒のピュアスポーツカーを作るんだ」という意思は最初から変わらなかったのですけれど、ディースさんからは非常にまっとうなご意見をいただきました。「君の気持ちはよく分かった。けれどもそういうリアルスポーツカーのビジネスは大変だよ。ちゃんとゴールを見据えて始めないとビジネスとしてうまくいかないよ」と。
それでも、こちらが「いやいや、昔ながらのスポーツカーとしてのスープラを作るんだ」と言い張るもんだから、ディースさんも折れて「分かった。じゃあもうけは度外視したとして、理念として何があるんだ。トヨタとBMWのブランド価値を互いに高めるものがなければ意味が薄い。例えば環境問題とスポーツカーをきちんと両立するとか、そういうアイディアはどうだ」と。
当時BMWはi8の発売目前というタイミングで、私も試乗させてもらいました。まさに環境時代のスポーツカーを模索したクルマだったんですが、彼自身はi8だけでは、まだまだインパクトが足りないからトヨタと組んでもっとそこを補強する商品を作るとか、そういう非常に前向きで大人な提案をいただいたんです。
けれどトヨタが「いやだ。ピュアなスポーツカーを作るんだ」と子供のようなことを言うものだから、話が全然進まなかったんですね。そうやって何も決まらないまま数年が過ぎて、私もちょっと不安になって来た頃、ディーズさんは突然BMWを辞めてフォルクスワーゲンに行ってしまい、スタッフが大幅に入れ替わってしまったんです。そこで新たに担当になられたのがクラウス・フレーリッヒ副社長でした。
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