田原総一朗が憲法9条で安倍首相を斬る――「“改憲した総理”になりたいだけ」参院選を前に「タブー」に迫る(3/5 ページ)

» 2019年06月25日 05時00分 公開
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安倍首相「大きな声では言えないけれど……」

――一方、安倍さんは改憲を唱えていますが。

田原: 16年夏に参院選があって、自民と公明で(議席の)3分の2をとった。安倍総理に僕は「衆議院も3分の2とった。参議院もとった。いよいよ憲法の改正だね」と言いました。安倍さんは、「大きな声では言えないけれど、田原さん。憲法改正をする必要は全く無くなった」と言った。「なぜ」と聞いたら、安倍さんは「集団的自衛権の行使を認めるまでは、アメリカがやんややんやとうるさかった。『日米同盟はこのままでは続けられない』と言うまでうるさかった。集団的自衛権の行使を(安倍内閣で)認めたら、何も言わなくなった。だから憲法改正をする必要はない」と。

――ただ、今回の参院選の公約で自民党は改憲を掲げていますね。

田原: 17年の憲法記念日に、安倍さんが憲法改正を打ち出したわけね。「自衛隊を明記する」と。僕はこれは、インチキだと思う。だって、鳩山一郎さんや岸信介さんが言っていた矛盾が解消されてないからね。

 自民党のある責任者に僕が、「自民党が本気で憲法改正をするというなら、『日本の国や国民生活のここが(その影響で)良くなる』とちゃんと説得してやるべきだ。僕が見る限り、自民党議員はみんな憲法から逃げている。議員が憲法から逃げて、国民がOKするわけないじゃないか! 本当に憲法改正したいなら、改めて僕のところに言ってこい」と言った。(その後)何も連絡はないね(笑)。

――本著では井上さんと伊勢崎さんが、単なる「自衛隊の明記」ではなく、憲法9条2項を削除する必要性について踏み込んだ議論をしています。

田原: ハト派中のハト派である井上さんと伊勢崎さんが、憲法改正を言い出した。なぜする必要があるか僕が彼らに聞いたら、「日本は憲法9条2項で戦力と交戦権を持たないと言っているから、自衛隊はどこまでやっていいのか、どこからはやってはいけないのか、『戦力統制規範』というものが作れない」と言う。逆に言うと、自衛隊は何でもできる危険極まりない存在である。日本が戦争を起こす際に、国会で事前に承認を得る必要があるとか、(法律を)いっぱい作らなくちゃいけないのに、何もできていない、ということです。

 さらに、伊勢崎さんは「自衛隊には軍法という物が無い。軍法会議も無い。もし自衛隊員が外地で事故を起こしても裁く法律が無い。存在自体が国際法違反だ」と言った。僕はリアリティーがあると思いましたね。

photo 左から井上達夫・東京大学教授、田原氏、伊勢崎賢治・東京外語大学教授(毎日新聞出版提供)

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