NZ産のキウイは「アゲアゲ」なのに、なぜ国産は「サゲサゲ」なのかスピン経済の歩き方(4/5 ページ)

» 2019年06月25日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

ブランドを一つにして規模を大きくする

 では、なぜ日本のキウイは高くなってしまうのか。「そんなもん、日本は物価が高いから人件費や経費がかさむに決まっているだろ」と思うかもしれないが、ニュージーランドも物価は高い。

 おまけに最低賃金は、日本円でおよそ1400円である。これに違反すると事業者はパクられる。事実、18年4月には、クライストチャーチで、日本食レストランを経営する日本人が、従業員に適正な賃金を支払わなかったことで、およそ540万円の罰金命令を受けたというニュースがあった。

 日本よりも遥かに賃金の高い労働者を使い、トラックと船で日本まで運び、専用の追熱倉庫で熟成させるなど手間をかけたキウイを、なぜ日本の農家よりも安く提供できるのかというと、日本の農家よりも「規模」が大きいからだ。

 ゼスプリのリリースによれば、生産者はニュージーランドに2500人、その他の地域に1200人いる。この巨大な生産体制によって、製品の生産量が増えれば増えるほど、1個当たりの平均費用が下がっていくという、いわゆる“規模の経済”として機能しているのは明らかである。

 というよりも、そもそもゼスプリができ上がったのも規模の経済が目的だ。ゼスプリ公式Webサイトの「キウイとゼスプリの歴史」には、ゼスプリの前身ができた経緯をこう説明している。

 『1980年代後半になると、キウイの輸出業者が増え、価格競争が始まりました。そこで生産者は窓口の一本化を計画。運営・マーケティング組織であるニュージーランド・キウイフルーツ・マーケティングボード(NZKMB)を設立しました』

 このようにブランドを一つにして規模を大きくすれば、それだけ設備投資もできるし、農業に先端技術を応用するなどより効率化も図れる。また、資金もあるのでマーケティングや広告に金を支える。規模が大きくなればなるほど競争力も上がっていくという意味では、まさしく「アゲ、アゲリシャス、アゲリシャス」なのだ。

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