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» 2019年06月28日 07時00分 公開

「がんになりました」――そのとき会社は? 中京テレビが示した一つの“答え”河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/4 ページ)

[河合薫,ITmedia]

3割以上が「がん診断後に退職」

 「がんと診断後に依願退職や解雇になった人」の割合は34.6%(2013年調査)で、「がん等私傷病に罹患した従業員に対する柔軟な雇用体制」を提示しているのは16%(労働者健康福祉安全機構調べ)です。社員に「がん罹患者への配慮内容等の教育」を行っている企業は、わずか1%。今や、がん患者の3人に1人が働く世代(15〜64歳)にもかかわらず、です。

 私がこれまでインタビューしてきた700人超の中にも、「がんにかかったこと」を会社に告げられずにいる人たちが何人もいました。勇気を振り絞って上司に告白したところ、退職に追いやられた人もいました。

 健康な人にとって「仕事」はしんどいものであったり、つまらないことであったり、できればサボりたい作業だったりもします。健康体でいると当たり前のように「社会との接点」が存在し、仕事がその大きな役目を担っている事を忘れがちです。

 しかしながら、生きるということと真剣に向き合うようになった時、仕事は生きる動機になる。仕事は「社会との接点」であり、社会の一員でいたい、社会で役割を持っていたいという欲求が極めてシンプルかつ純粋に「働く」という行動に転換され、“HOPE”をもたらし、生きる力を高めてくれるのです。

 「HOPE」とは、「逆境やストレスフルな状況にあっても、明るくたくましく生きていくことを可能にする内的な力」で、心の底に秘めているいわば人生の「光」です。しかしながら、「HOPE」は“そこにある”ことに気付き、自分で“パンドラの箱”を開けないとダメ。

 では、人はいったいどういうとき、HOPEに気付けるのか――? それが長年、心理学者や哲学者、社会学者たちの疑問でした。

 そして、長い年月をかけて議論され、研究が重ねられた結果、他者との関係性、大切な家族、友人、異性といった、自分を大切に思ってくれる人、自分自身が大切に思う人など、他者の存在との関わりの中で見いだされることが分かりました。

 私たちの研究(東京大学大学院健康社会学教室)でも、「信頼できる人」がいることでHOPEが強まる傾向が認められています。

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