このようにお話すると「管理もやめて自由にして、個人ごとに好きに働けばいいのだ」と思うかもしれませんが、いきなりそのようなことをしても、きっとうまくいきません。
私たちも、長い期間かけてここまでに至ったのですが、取り組んできたことを振り返ってみると、大きく3つの段階があったように思います。
何より最初に取り組んだのは、生産的に働くことです。
仕事は、本人たちが楽しければいいというわけではなく、働いて価値を生み出すことが大前提にあります。まずは無駄な作業を見直し、要らない会議を減らし、仕事の進め方も継続的に改善し、生産性を高めて成果を出せるようになってはじめて次の段階に進めます。
次に、誰かに管理されなくても働くことを目指します。
自分で仕事を考えて、まわりと協調しながら成果を出していくようになると、こまごまとした管理は不要になり、組織としての負担も軽減されます。本人も自分の意思で働くことで自由と責任を得て、より高い生産性と品質を実現できます。
そうして自律的に働けるようになれば、働く場所や時間は自分で選択できるのはもちろんのこと、苦手なことや評価など心理的な負担からも自由になっていくことができます。組織にいながら、自由を手に入れることができるのです。
最後の段階は、自分たちだけの働き方を追求する段階です。
ここまでくれば、業界の慣習や常識にとらわれることなく、独創的なビジネスモデルやマーケティングの手法を見つけ出すことのできる実力のついたチームになっています。他社にはない独創的な働き方を実現することが、自分たちにとっての強みにもなっていくことでしょう。
最終的には、仕事をしているのか遊んでいるのか、はたから見ても分からない状態になります。もちろん、成果を出すからこそ豊かに暮らしていくこともできます。そんなふうに仕事そのものが楽しくなれば、人生の100%を楽しむことができるのです。
組織として圧倒的な成果を出すことと、そこで働く個人が圧倒的に楽しく仕事をすること――その両立こそが、実現したい組織の姿です。それを夢や妄想で終わらせず、1つ1つ試行錯誤しながら実践したこと、その結果として実現できたこと、その過程で得た気付きや考えをまとめたのが本書になります。
こうした悩みを抱えている経営者やマネジャーはもちろん、
そんなことを考え始めたビジネスパーソンの方にも読んでもらいたいと思って書きました。
本書がきっかけになって、組織や経営の在り方を見直す会社が増えて、1人でも多くの人が仕事を楽しむようになる社会が実現することを願っています。
ソニックガーデン(SonicGarden)の創業者で代表取締役社長。
1974年京都生まれ。1999年立命館大学大学院を卒業し、TIS(旧 東洋情報システム)に入社。2003年に同社の基盤技術センターの立ち上げに参画。2005年に社内SNS「SKIP」の開発と社内展開、その後オープンソース化を行う。2009年にSKIP事業を専門で行う社内ベンチャー「SonicGarden」を立ち上げる。2011年にTISからのMBOを行い、ソニックガーデンの創業を行う。
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