自動車を売るビジネスの本質 マツダの戦略池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/5 ページ)

» 2019年07月08日 07時07分 公開
[池田直渡ITmedia]

 多くのものがそうだが、本当に原理原則まで遡ると、複雑な物事はとても単純な言葉で表せる。

 例えば、トヨタに言わせればクルマを作ることは「売れた分だけ作る」ことになる。いわゆるトヨタ生産方式だ。

 言葉は簡単だが、中身はとてつもない多重構造になっている。「売れた分だけ作る」は同時に「売れた以上に作らない」だし、「売れた分は遅滞なく作る」だし「売れないクルマを作らない(不良は出さない)」でもある。

マツダの第7世代にあたる最新車Mazda3

 クルマを売る側はどうだろう? こっちは「ブランド価値向上」に尽きる。このブランド価値を軸にして見ると、新車価格と中古車価格は相互に関係しつつループ構造になっている。「新車を正価販売する」ためには「高い商品力」を持つ魅力的商品でなくてはならないし、販売店の「高い販売力」も求められる。

 商品とサービスに魅力があれば、新車を正価、つまり値引きせずに売れるから中古車の相場が上がり、その結果下取り価格が高いので、買い替え時により高いクルマが売れる。これが理想的サイクルだが、ひとつ歯車が狂うとサイクルが逆回転してしまう。

 「商品・サービスに魅力がない」→「新車が正価で売れない」→「在庫がダブつくか生産設備の稼働率が落ちる」→「苦しくなって値引き販売」→「新車の値引き影響で中古車価格が崩壊」→「下取りが悪化」→「ユーザーの買い替え原資の不足で新車販売が悪化」→最初にもどる

 だから自動車メーカー各社はブランド価値の向上に必死に取り組んでいる。

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