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「社員のやる気が失せていく」会社がやっていることあなたの会社は大丈夫?(3/3 ページ)

» 2019年07月10日 10時00分 公開
[倉貫 義人ITmedia]
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仕事の結果にフィードバックをする

 「誰かに喜んでもらいたい」という気持ちは、仕事の大きなモチベーションになります。それなのに、喜んでもらえた様子も見えないとしたら、頑張る気は起きません。よほどストイックな人でも無理でしょう。

 自分がやった仕事に対して、良いことも悪いことでも、お客さまやユーザーから直接フィードバックをもらえることが、何よりやる気につながります。できるなら、価値を生み出す人と価値を享受する人の間に入る人やものを排除した方が効果的です。

 私たちの会社でやっているシステム開発では、一般的な受託開発のように営業担当がいて、プロジェクトマネージャーがいて、何人ものメンバーでプロジェクトを構成する、というようなことをしていません。顧問の形で契約をして、担当者は顧客の責任者から直接相談を受けながら開発を行っています。

 営業もマネージャーも介さないで顧客に価値を提供するので、結果は非常にシビアに求められますが、うまくいけば顧客と一緒になって喜びを感じられます。これは、他に得難いフィードバックの機会になります。

 そして、フィードバックというのは、一度の大きな反応よりも、小さくても頻度が多い方がいいのです。半年に一度だけの面談でこってりフィードバックされるよりも、毎週に少しずつ軌道修正するようなフィードバックをもらえた方がやる気は出ます。

 なんだったら、普段からのメンバー同士の雑談のようなコミュニケーションでもいいのです。互いの存在や仕事に反応することは、生産性に影響を与えます。私たちの会社では、「振り返り」がフィードバックの機会にもなっていて、数人のチーム単位で毎週行っています。

ちょっと難しい仕事に挑戦してもらう

 スポーツやアートの世界で、人が没頭して楽しいと思える状態を「フロー状態」と呼びます。フロー状態に入るためには、自分自身の技量と対象の難易度がちょうどいいバランスであることが重要です。

 例えば、技量が高いのに難易度が低ければ、簡単すぎて退屈になってしまいます。逆に、技量が足りていないのに難しすぎることに取り組むと、不安になってしまいます。退屈でもないし不安でもない状態にあることが、やる気につながります。これは仕事でも同じです。

 最初のうちはチャレンジングで、そこから学ぶ要素の多かった仕事でも、長年続けていって慣れてくればくるほど、できることは増えるけれど退屈にはなってしまうものです。そうした状況に陥らないために、仕事の内容をチューニングしたり、新しいチャレンジを取り込めるようにしていくといいでしょう。

 私たちの会社におけるプログラマーは、顧客と話をして本当に必要な要求を引き出すことから、システムに必要な画面やデータベースの設計を行って、プログラムそのものの開発(プログラミング)も行い、そのプログラムを動かして使えるようにするところまでを担当します。これは一般的に知られているプログラマーよりも非常に幅広い責任があり、求められる知識や経験のレベルも高いものです。そこまで全部できて「一人前」と呼ばれます。

 しかし、新卒で入社した社員たちは、最初からそこまで全てができるものではありません。そこで、最初は先輩たちが設計をし終わった状態からプログラミングするところだけを担当し、先輩の設計を見て学んでいくのです。そうして、プログラミングが少しできるようになってきたら、そこから設計の仕事にも手を広げていきます。そうすると、また難しい仕事に取り組むようになって、退屈しないで済むのです。このように、常に「フロー状態」でいるための道筋を社員のために用意しています。

 また、一人前の社員になると、自分で勝手に新しい技術に取り組むようになります。一つの技術分野で熟達してきたら、新しい技術分野に取り組むことで「フロー状態」を維持します。難易度を自分でチューニングできるようになることも一人前の条件です。

そもそも「やる気」に頼らない仕組みを作る

 マネジメントでなんとかしようとしても、本人のプライベートでつらいことがあったりすれば、やっぱりやる気は出せません。むしろ、そんな状況のときにまでやる気を出させようなんて、酷な話だと思いませんか。

 やる気なんてものは、上がったり下がったりするものです。なので、やる気などなくても一定の成果が出せるような仕組みやチームを作ることがすべきことで、「やる気があればさらにいい」という状態を作った方がいいでしょう。

 私たちの会社では、プロジェクトが始まると必ず1週間から隔週で定例の打ち合わせを設定するようにしています。人間なので、どうしても気が進まないような仕事もありますが、毎週チームで顔を合わせる機会があると、「それまでに自分が担当している仕事はなんとかやろう」という気持ちになります。

 また、チーム構成を考えるときに、なるべく社外のメンバーを巻き込むようにしています。社内のメンバー同士だとどうしても、なぁなぁになって甘えが出てしまうところがありますが、社外の人がメンバーにいると迷惑を掛けられないし、格好悪い姿を見せたくないので頑張るようになります。

倉貫義人プロフィール

ソニックガーデン(SonicGarden)の創業者で代表取締役社長。

1974年京都生まれ。1999年立命館大学大学院を卒業し、TIS(旧 東洋情報システム)に入社。2003年に同社の基盤技術センターの立ち上げに参画。2005年に社内SNS「SKIP」の開発と社内展開、その後オープンソース化を行う。2009年にSKIP事業を専門で行う社内ベンチャー「SonicGarden」を立ち上げる。2011年にTISからのMBOを行い、ソニックガーデンの創業を行う。


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